【箱根駅伝2026】國學院大學の出雲駅伝2連覇を決定づけた"攻撃区間"と箱根駅伝総合優勝への布石 (2ページ目)
【本気で箱根を取りにいきたいです】
今季、目標に掲げる箱根駅伝の総合優勝を見据えるなか、価値あるタイトルだった。例年に比べて、出雲に向けた調整期間は2週間も短く、主力組は9月末まで距離走、ロングジョグを入れてハードな練習を積んでいたという。すべて箱根からの逆算である。5000m、10000m、ハーフマラソンといずれもチーム最速タイムを持つ青木瑠郁(4年)も、ギリギリまで長い距離を走っていた。本来のポテンシャルを考えれば、1区の区間5位は物足りないかもしれない。ただ、事情を知るキャプテンは、同期を慮った。
「疲労が蓄積するなかでの走りでした。僕と(青木)瑠郁は、9月に入っても月間1000km近くは距離を踏んでいたので。みんなも昨年と比べると、月間でプラス200kmほどは増えていると思います。そういうなかで、勝てたことは自信になります。今年度は箱根集中型で長い距離を意識しながら、ずっと練習をしていますから」
三大駅伝の初戦を制しても浮かれることはない。3週間後に控える全日本大学駅伝の優勝を視野に入れつつも、最終決戦に向けて、万全の準備をしていくという。すでにチームとして、山の対策も進めており、悲願の初制覇に意欲を燃やしていた。
チーム全体をマネジメントする前田監督は調整方法、選手起用を含めて、箱根駅伝で勝つためのプランニングを立てている。一戦必勝で臨んでいた昨季とは、明らかにアプローチが異なる。出雲路に出走しなかった選手たちには、長い距離を得意とするロードタイプも多い。前回、箱根駅伝の6区を走った嘉数純平(4年)、10区の吉田蔵之介(3年)、前年度は故障に苦しんだ後村光星(3年)、鎌田匠馬(4年)、田中愛睦(3年)らも2大会前の箱根経験者だ。出雲駅伝の補員に入った飯國新太と鼻野木悠翔(ともに2年)、メンバー入りした山倉良太(3年)、ルーキーの高石樹は伸び盛り新戦力として期待されている。トラックシーズンにあまり目立たなかった選手たちにも実力者はそろう。
「出雲の出走組と同じレベルくらいの選手たちが、あと3人、4人はいます。正直、頭数が増えると、うちはもっと上にいけると思っています。今季は若手(下級生)がどのように融合していくかを見ていましたが、ベテラン(上級生)も出てきているので。それが國學院。本気で箱根を取りにいきたいです」
落ち着いた口調で話す言葉には、自信がにじんでいた。10月13日の出雲制覇はプロローグに過ぎない。伊勢路(11月2日・全日本大学駅伝)ではさらに強い姿を見せ、満を持して正月の大舞台に臨むつもりだ。
著者プロフィール
杉園昌之 (すぎぞの・まさゆき)
1977年生まれ。サッカー専門誌の編集記者を経て、通信社の運動記者としてサッカー、陸上競技、ボクシング、野球、ラグビーなど多くの競技を取材した。現在はジャンルを問わずにフリーランスで活動。
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