【東京世界陸上】村竹ラシッドのハードリングと男子110mハードルの進化 元名ハードラー・山崎一彦コーチが分析 (2ページ目)
【ハードルに脚をぶつけた自覚がなかった】
福井の村竹は主に抜き脚を、何台もハードルに当てていた。その点を質問されたことへの答えが印象的だった。
「当てている感覚がまったくなかったんですよ。結構、当たってました? じゃあ、当たっていたかもしれないですけど、(それでも)いいです」
テンションが上がって、当てたことに気づかなかったのだと理解した。それも一因だったかもしれないが、山崎コーチは「水平にぶつけているから大丈夫なんです」と理由を説明してくれた。
「村竹の特徴はスムーズなハードリングです。踏み切りはそこまで強くありませんが、踏み切りからハードルに向かって行くときのしなやかさは群を抜いています。ハードルを越える時に重心は上がっていますが、頭の位置は低いし、手の位置はハードルより下です。インターバルの走りでは重心が高いので、重心の上げ下げが少ない動きでハードルを越えていく。ハードルに当たるとしても、(重心の上下動が大きい)波打つ動きではありません。水平に近い動きなら、スパーンと当てても大丈夫なんです」
世界トップの外国勢でも、ハードルに当てないことを重視するあまり、ハードルから高い位置を越えていく選手も多い。そこに「つけ入る隙がある」と山崎コーチ。
問題はハードルそのものの"つくり"である。国内で普及しているメーカーのものは当てても衝撃が少ないつくりになっているが、世界陸連主催試合で使われるハードルは、当てた場合に衝撃が大きくバランスを崩しやすい。
そこで重要なのが前編でも紹介した、DLなど海外の試合経験である。剛性の高いハードルに脚を当ててしまった時に、それも外国選手と競り合う中でどう対処するか。国内でタイムを出すだけでは経験できないことを、村竹はこの2シーズンで繰り返し経験してきた。
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