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「青学大箱根駅伝4連覇」戦士・森田歩希が振り返る実業団へのシフトチェンジの難しさとGMOで第2の人生を踏み出した理由 (3ページ目)

  • 生島 淳●取材・文 text by Ikushima Jun

【「キツいところに行きたいです」と答えました】

現在の業務について、難しさも含めて前向きに取り組み、充実した日々を送っている photo by Murakami Shogo現在の業務について、難しさも含めて前向きに取り組み、充実した日々を送っている photo by Murakami Shogo 2024年6月の函館ハーフを終えて、森田は走ることから距離を置いた。GMOインターネットグループの陸上部を支えつつ、セカンドキャリアの準備に入った。

「もともと、陸上どっぷりの生活も嫌だなと思っていたので、GMOの中でどんな仕事ができるか、考え始めました。それに、原さん(晋・青学大監督)と話した時に、『もしも将来指導者になるとしても、一度、陸上の外の世界を経験したほうがいい』と言われていたので、会社員としてどれくらい成功できるのか、そこにチャレンジしようと考えました」

 GMOインターネットの伊藤正社長と面談した時には、こんな話もした。

「成り上がって、お金持ちになりたいと話しました(笑)。社長からは『どんな仕事をしたい?』と質問されて、ビジネスにおいては同世代に後れを取っているため、早く追いつきたかったので、『キツいところに行きたいです』と答えました」

 現在、森田が勤務している部署は昨年立ち上がったばかりの部署で、森田自身は生成AIの開発や、機械学習に最適化されたGPUクラウドのマーケティング、営業を担当している(https://gpucloud.gmo/)。

「できたばかりの部署に行くのは、自分の希望とマッチしていました。引退してから仕事に就くにしても、出来上がった部署に行くと流れに乗るだけで、自分の成長が少ないのかなと思ったので」

 自分の人生はここから−−そんな森田の意気込みが伝わってくる。そして自分の可能性を切り拓くために資格試験にもチャレンジしている。

「2022年に結婚しまして、妻からの勧めもあって、中小企業診断士の資格の勉強を進めています」

 中小企業診断士は国家資格。一次試験では「経済学・経済政策」、「財務・会計」、「企業経営理論」、「運営管理(オペレーション・マネジメント)」、「経営法務」、「経営情報システム」、「中小企業経営・中小企業政策」の7教科が課され、森田は昨年一次試験に合格し、今年は二次試験を受ける予定だ。

「いまはまだ、社会人としての準備を進めているところです」

 タッ、タッ、タッ、タッと軽快に前に進んでいた森田。競技生活から引退し、ジャケットを着る生活になっても軽快なリズムは変わらない様子だ。

「本当にこれからだと思います。走るほうですか? 今は健康維持のために走ってますけど、そのうちハーフマラソンや、フルマラソンに出たくなるかもしれませんね」

●Profile
もりた・ほまれ/1996年6月29日生まれ、茨城県出身。御所ケ丘中(茨城)―竜ヶ崎一高(茨城)―青山学院大―GMOインターネットグループ。中学3年時に5000mで当時の日本中学最高記録(14分38秒99)をマークし、高校時代はケガに悩まされる期間も多かったが、青山学院大に入学すると2年次から主力として台頭。三大駅伝のデビュー戦となった全日本大学駅伝では6区区間賞を獲得しチームの優勝に貢献すると、箱根駅伝では4区区間2位、3年時に2区区間賞とチームの3、4連覇に貢献。4年次には主将を務め、出雲駅伝、全日本の二冠、総合2位となった箱根では3区を区間新記録で区間賞を獲得した。卒業後にGMOインターネットグループ株式会社に入社し、トラックを中心に競技を継続。2024年度を持って現役引退を表明。現在は社業に専念し、GPUクラウドのマーケティングと営業を担当する。(GMO GPUクラウド商材サイトはコチラ https://gpucloud.gmo/)。

著者プロフィール

  • 生島 淳

    生島 淳 (いくしま・じゅん)

    スポーツジャーナリスト。1967年宮城県気仙沼市生まれ。早稲田大学卒業後、博報堂に入社。勤務しながら執筆を始め、1999年に独立。ラグビーW杯、五輪ともに7度の取材経験を誇る一方、歌舞伎、講談では神田伯山など、伝統芸能の原稿も手掛ける。最新刊に「箱根駅伝に魅せられて」(角川新書)。その他に「箱根駅伝ナイン・ストーリーズ」(文春文庫)、「エディー・ジョーンズとの対話 コーチングとは信じること」(文藝春秋)など。Xアカウント @meganedo

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