東京2025世界陸上メダル候補、村竹ラシッドの人生を変えた1回のフライング 「走ることも許されず...」 (3ページ目)
【向き合った時間が、記録に直結する】
――ハードルを始めたきっかけについても知りたいのですが、幼い頃はさまざまなスポーツをやっていたそうですね。
「小さい頃はサッカーや水泳もやっていましたけど、本格的にやっていたわけではないです。陸上をやるきっかけは、消去法っぽいのですが、球技があまり得意ではなかったということと、チームスポーツがちょっと苦手だったということです。それで中学で陸上部に入り、走ることも跳ぶこともできて面白そうだなと、ハードルにたどり着いた感じです。なんか、やっている人も少なくて、100メートルとかより将来的な可能性があるかなと思ったりもしていました。
長距離が得意でスタミナがあればよかったのですが、僕は一瞬のスピードだけ。だからゲーム時間の長いチームスポーツは、向いていないと感じていました。それに、チームスポーツって考えることが多すぎません? たとえばサッカーだったら、自分が攻めているときに味方がどこにいるのかとか、守っているときに敵はどこから攻めてくるのかとか、考えることが多そうで......。僕は脳のメモリーがそんなにないので、すぐにあきらめました(笑)」
――ハードルも考えることが多いのでは?
「ハードルは自分と向き合った時間が、記録に直結すると思っているので、考えることは多いです。ただ、僕は割と自分を突き詰めることは好きで、団体スポーツの思考とはちょっと違うというか。研究というか、自分が興味を持っていることなら、すごくのめり込んでしまう。だからYouTubeなどで、国内外問わずいろいろな選手の動画を見るのは好きで、自分に取り入れたい動きなどがあれば、それをどう自分に落とし込めるか、ということは常に考えているくらいです」
――確かにハードル間の歩数や、どういう高さで飛ぶのかとか、突き詰めることがタイムに影響しそうですね。
「僕はもともと、スタート(から最初のハードルまで)は7歩じゃなくて8歩だったんです。だから、8歩から7歩にするときは、7歩で走っている選手の映像をめちゃくちゃ見ました。あとは後半どんどんスピードを上げていくためには、どういうレースにしたらいいのかとかも、すごく調べたり。もちろん現在進行形で、いまも続けています。ハードルなど技術種目の選手はみんなやっているような気もしますけどね」
(つづく)
【profile】
村竹ラシッド
2002年2月6日、千葉県生まれ。JAL所属。男子110メートルハードル日本記録(13秒04)保持者。小学5年生で、担任から陸上競技を勧められたことがきっかけで陸上競技を始める。順天堂大学在学中の2022年、世界陸上競技選手権大会オレゴンに出場。パリ五輪では5位入賞を果たす。
【1】『東京2025世界陸上、「世界から一番遠い種目」のメダル候補、村竹ラシッドが語るパリ五輪の「歴史的快挙」』はこちら>>
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著者プロフィール
栗原正夫 (くりはら・まさお)
1974年6月11日生まれ、埼玉県出身。大学卒業後、放送、ITメディアでスポーツにかかわり、2006年からフリーランスに。サッカーを中心に国内外のスポーツを取材し、週刊誌やスポーツ誌に寄稿。ワールドカップは1998年、夏季五輪は2004年からすべて現地観戦、取材。メジャーよりマイノリティ、メインストリームよりアンダーグラウンド、表より裏が好み。サッカー・ユーロ、ラグビーワールドカップ、テニス4大大会、NBAファイナル、世界陸上などの取材も多数。
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