検索

箱根駅伝「山の名探偵」から「マラソンの名探偵」へ? 早大・工藤慎作が目指す総合優勝とロス五輪マラソン代表 (3ページ目)

  • 和田悟志●取材・文・写真 text & photo by Wada Satoshi

【成長の礎はマラソンを走るための走力強化】

 もちろん、その強さには根拠がある。自らを"走る・食べる・寝るだけの陸上ロボット"と称するほどストイック。休日もほとんど遊びに出掛けることはなく、自室で体を休めることに努めている。

 一方で、追い込むときには、とことん追い込む。夏合宿中には花田監督が「無理はしなくてもいいよ」と諭しても、ハードな練習の翌日にもかかわらず、早朝から上り基調のコースでロングジョグを敢行する工藤の姿があった。

 工藤がここまでストイックに競技に取り組むのは、大きな目標があるからだ。それは2028年のロサンゼルス五輪にマラソンで出場することだ。

「そのためには在学中にMGC(マラソングランドチャンピオンシップ、日本代表選考レース)の出場権を獲得しなければいけないので、在学中にマラソンを走るプランがあります」

 箱根駅伝の5区での快走があまりにも強烈だったが、工藤にしてみれば、山に特化して準備を進めてきたわけではなかった。マラソンを走るために走力に磨きをかけてきたことが、結果として箱根5区の快走にもつながった。

 昨年7月にはゴールドコーストマラソン(オーストラリア)でペースメーカーを務めた。現地に到着してすぐにジョギングをしている最中に迷子になるという珍道中になったが、レースでは余裕を持って25kmまで走りきり、マラソン挑戦への手応えを得られた。

「彼には来年の冬にはマラソンをさせたい。青山学院大の若林君が(2月2日の別府大分毎日マラソンで)学生記録を出しましたけど、それを軽くクリアして、ロサンゼルス五輪の日本代表につながるマラソンにできればと思っています。

 箱根をしっかりと沸かせて、今度は"マラソンの名探偵"として、(マラソンの問題を)解決してくれればいいかなと思っています」

 花田監督は自著の出版記念トークイベントでこんなことを口にしていた。大勢の聴衆の前だったのでリップサービスもあったかもしれないが、工藤に大きな期待を寄せているからこそ、こんな言葉が飛び出したのだろう。

 早稲田は1学年上で新駅伝主将の山口智規がエースとしてチームを牽引してきたが、今や工藤もまた、"ロードのエース"と言っていい。

 箱根駅伝をはじめ学生三大駅伝での活躍の先には初マラソン挑戦が待っている。大学3年目の工藤は、ますます注目を集めることになりそうだ。

著者プロフィール

  • 和田悟志

    和田悟志 (わだ・さとし)

    1980年生まれ、福島県出身。大学在学中から箱根駅伝のテレビ中継に選手情報というポジションで携わる。その後、出版社勤務を経てフリーランスに。陸上競技やDoスポーツとしてのランニングを中心に取材・執筆をしている。

ハードラー・田中佑美 「私服」スタジオ撮影オフショット集

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る