出雲、全日本と4位の創価大学 3強崩しへ榎木和貴監督「うちに足りないのは勝つんだという意識」 (2ページ目)

  • 佐藤俊●取材・文 text by Sato Shun

 最後は、死力を尽くした抜き合いを演じた。

「打倒・青学だったので、絶対に負けたくなかったですね。ずっと、お互いに牽制して、どこで勝負を仕掛けるのかというのを迷っていたんですが、最後に来て、スパートをかけ合う感じになりました。そこでなんとか前に出たかったんですけど、出れないみたいな...。ラストではもう心が折れそうだったんですけど、みんなの応援でなんとか持ちこたえられました。3区の惇那(石丸・3年)の顔を見た時、キツかったけど、我に返って1秒でも早く襷を渡して、区間賞をと思ったんですけど、負けてしまいました。理想を言えば、ギリギリで襷を渡すのではなくて、10秒、20秒差をつけたかったんですけど、大学のエースの強さというのを改めて感じました」

 吉田響はトップの青学大と同着で区間2位、わずか0.01秒差で区間賞を逃し、悔しさを噛みしめた。

「創価はずっとダークホースと言われていたので、その評価を覆したいと思っていて、なんとかトップで襷を渡して優勝争いをしたいと思っていました。トップにこだわるのは、自分が一番になりたいというのもありますが、一番で(襷を)もらった時は気持ちとか走りにも影響すると思うからです」

 吉田響の走りの刺激を受けて出走した3区の石丸だが区間10位、トップの青学大とは34秒差に広がった。4区の山口翔輝(1年)は区間8位で4位、トップの青学大とは1分46秒差に広がった。その差なら5区のスティーブン・ムチーニ(2年)の力であればトップに出る展開にもっていけるだろうし、榎木監督もムチーニが区間賞の走りで、この借金をチャラにしてくれると読んでいた。だが、ムチーニは思ったよりもペースが上がらず、区間2位、3位に順位を上げたがトップの青学大との差は、まだ1分06秒もあった。

 ムチーニは複雑な表情をして、こう語った。

「4区までいい走りをした選手もいたし、自分もという気持ちでいましたが、出雲で膝を痛めて、いい状態にもっていくことができなかった。それでも最初の5キロは自分のペースで刻めたけど、それ以降はかなり暑さを感じて、ペースが落ちてしまった。コンディションがよくないなか、なんとか自分をマネジメントしてフィニッシュしたけど、暑さがなければ区間1位も狙えたかなと思うので、悔しいです」

 1区、2区で流れを掴み、5区のムチーニでトップを狙う戦略は、すべて狙い通りにはいかなかったが、それでもアンカーの野沢悠真(3年)が区間2位の好走で、4位でフィニッシュを果たした。出雲の上位3校の一角を崩すことはできなかったが、創価らしい粘りのある駅伝を出雲と全日本の2大会連続で実現できたということは、チームにその順位に合う地力がついてきたことの証左でもある。その一方で、もうひとつ順位を上げられない現実もあった。

 榎木監督は、見えた「課題」をこう述べた。

「1区、2区と出足がよかったのは評価できますが、そこからですね。いい位置で3区につなげられましたが、そこから加速することができなかった。青学は折田君(壮太・1年)が独走態勢を築いていった。うちは流れを作ったけど、そこで乗りきれなかった。そこがうちの弱さかなぁと思いましたし、ムチーニのところもその前で後手を踏んでいたので、最終的にトップに立てなかった。3区を始め、4区、5区、6区のつなぎ区間の差が上位3校との間で出てしまったかなと思います」

 小さなミスが散見され、思うように展開できなかった。そういうことはレースではよくあることだが、見えた課題はそれだけではない。

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