出雲、全日本と4位の創価大学 3強崩しへ榎木和貴監督「うちに足りないのは勝つんだという意識」 (3ページ目)
吉田響はこう語る。
「チームの総合力で、やはり國學院さんや駒澤さんと比較して、まだまだ足りない部分があると思います。そこをうちはみんなで強くなって、総合力を押し上げていかないといけないんですが、もっと個人が頑張るというか、自分がやるんだという部分を出して行かないといけないと思います。出雲、全日本と4位になって『惜しかったね』で終わっていたら何も変わらないと思うんです。出雲はスティーブン(ムチーニ)がいないなか、4位だったのでポジティブにとらえられる4位でしたが、今回は課題ばかりが目についたと思うんです。そこを箱根まで個々がどれだけ真剣に取り組み、どれだけ気持ちを持ってやっていけるかだと思います」
創価大は強い。だが、もうひとつ勝利に対する熱や迫力が伝わってこない。
榎木監督は他大学の選手が創価大に対して感じているものを把握しており、それをこのレース後に選手に伝えた。
「出雲も全日本も上位3校は、同じ顔ぶれなんですよ。うちはふたつとも4位で、どうしてもその一角を崩せない。なぜかというと、上位3校、例えば國學院さんは何がなんでも優勝という執念をもって駅伝をしているからです。駒澤さんも青学さんも勝つんだという意識を持って、駅伝をしています。うちはそこの気持ちの部分が少し足りない。3強だから負けてもいいのではなく、勝って当たり前、駅伝で戦うんだという覚悟をもうちょっと持たないと3強には勝てない。そのことを今回のレース後、選手に伝えました」
優勝した國學院大は、勝利に貪欲だった。エースだけではなく、つなぎ区間の4区、5区、6区は、4位―1位―1位と選手が好走し、圧倒的な強さを見せた。アンカーで3位から2位に上がった駒澤大は駅伝デビューとなる谷中晴(1年)、村上響(2年)、安原海晴(2年)、が3位―5位―3位とまとめてロング区間につなげた。創価は3区10位、4区8位、5区2位、6区9位と1区と2区でつないだ勢いが萎んだ展開になった。
ただ、榎木監督は箱根駅伝に向けて、悲観はしていない。
「選手の意識は今回のレースで変わっていけると思います。箱根では、うちの山要員がいる5区までにどれだけいい流れを作れるかということだと思っています。まだ、完全にそこまでつなぎきれていないですが、見えてきているところもあります。出雲と全日本に絡めなかった選手も世田谷ハーフや上尾ハーフ、日体大記録会で試合を経験してもらい、もう1回、箱根前にチームを作り直して臨みたいと思っています」
吉田響も榎木監督も戦える手応えは感じている。選手の意識改革が進めば走りも変わるだろうし、そうすることで総体的にチーム力が上がっていく。
全日本の4位は箱根駅伝の総合優勝という目標を達成する上でターニングポイントになった。
2カ月後、笑顔でそう答える選手たちを大手町で見られるだろうか――。
著者プロフィール
佐藤 俊 (さとう・しゅん)
1963年北海道生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、出版社を経て1993年にフリーランスに転向。現在は陸上(駅伝)、サッカー、卓球などさまざまなスポーツや、伝統芸能など幅広い分野を取材し、雑誌、WEB、新聞などに寄稿している。「宮本恒靖 学ぶ人」(文藝春秋)、「箱根0区を駆ける者たち」(幻冬舎)、「箱根奪取」(集英社)など著書多数。
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