【全日本大学駅伝】出雲覇者・國學院大の前田康弘監督が抱く初制覇への自信「区間距離が伸びてくれば優位性は高くなる」 (2ページ目)

  • 杉園昌之●取材・文 text by Sugizono Masayuki

【駒大・藤田監督も一目置く分厚い選手層】

辻原は、出雲駅伝3区で青学大の黒田朝日(右)と渡り合った photo by SportPressJP/AFLO辻原は、出雲駅伝3区で青学大の黒田朝日(右)と渡り合った photo by SportPressJP/AFLO

 出雲路で著しい成長ぶりをアピールした2年生コンビも、初制覇には欠かせないピース。

 昨年度、スタミナを不安視された野中は伊勢路、箱根路と当日変更でメンバー落ちしたが、今年度は粘り強い走りを見せている。トラックシーズンに10000mで28分17秒98の自己ベストを出し、トップランナーの仲間入り。単独走の粘り強さが試されるチーム内のタイムトライアルでも力をアピールし、10月14日の出雲で三大駅伝デビュー。区間賞獲得と最高の結果を残し、「前田監督に力を証明できた」と胸を張った。

 一方、出雲の3区で他大学のエース格と堂々と渡り合った辻原輝も勢いに乗るひとり。あまり得意としない短い区間距離(8.5km)でも区間4位と好走したのは大きな弾みになる。前回の箱根4区で区間4位の実績を残しているように距離が伸びれば、伸びるほど強くなるタイプ。突出したタイムは持っていないが、本番のレースにとにかく強い。5月の5000m(13分43秒35)、6月の10000m(28分27秒93)の記録会では、自己ベストとともに組1着でフィニッシュ。初出走を狙う全日本大学駅伝に向けても、夏から意気込んでいた。

「タフなコースで爆発力ある走りを見せ、先頭で襷を持ってきたいと思っています。自分の区間で勝負を決めるゲームチェンジャーになりたい」

 そして、注目すべきは出雲駅伝に出走しなかった7人目以降の選手たち。スタートラインに立った6人と遜色ない走力を持ち、全日本大学駅伝に照準を合わせて準備している。

 前田監督は、声を弾ませていた。

「高山豪起(3年)は出雲でも起用したかったくらいです。後村光星(2年)、嘉数純平(3年)も相当高いレベルにあります」

 名前の挙がった3人とも、昨年の伊勢路に出走している実力者たちである。ハーフマラソンで1時間01分42秒のタイムを持つ高山は4区で区間4位の実績を残し、今年7月には10000mで28分25秒72をマーク。1区で区間6位の後村は28分30秒39、6区で区間5位の嘉数は28分40秒16といずれも今季、自己ベストを更新するなど、順調に練習を重ねて結果につなげている。新たな戦力の台頭に加えて、前回3位の出走メンバーが8人中7人も残り、ほとんどの主力が右肩上がりで成長している。

 全日本大学駅伝で歴代最多となる16度の優勝を誇り、4連覇中の駒大も國學院大の地力は認めざるを得ないようだった。OBの藤田敦史監督は、苦笑しながら大学時代の後輩でもある前田監督が率いるチームを評していた。

「今年は絶対にくると思いましたが、やっぱり強いチームをつくってきた。平林君が最上級生になり、4学年が充実している。最高の選手層。昨年のうちのような感じですね。(全日本でも)切り札を前半と後半に持ってくることができますから」

 優勝候補の一角ではなく、筆頭になりつつある。春の終わりから前田監督は明るい表情で口にしていた。

「『國學院が来るよね』という流れをつくり、全日本は勝つべくして勝ち、箱根に向かいたい」

 ここまでは46歳の指揮官が描いたストーリーどおりである。秋の深まる伊勢で三冠に王手をかけても、もはや驚く人はいないかもしれない。

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