パリ五輪でメダル期待の男子「4×400m」マイルリレー 日本初の快挙に挑む「サムライ」たちの現在地 (4ページ目)
【佐藤拳太郎は失敗を無駄にしない】
パリ五輪を見据えれば、賢明な判断だっただろう。アキレス腱の状態が気になるところだが、不安があるなかでも予選を45秒台半ばで走れたのはプラスに捉えることもできる。
佐藤は東京五輪後に左のアキレス腱周囲炎を悪化させ、2022年の日本選手権は予選敗退に終わっている。一時は引退を考えたこともあったが、早稲田大学の大学院で自らの400mの走りを追究し、ロジカルな視点から400mという種目と向き合ってきた。
以前は入りの200mに注力していたため、後半に大きくペースダウンしていたが、200mから300mの「再加速の局面」の改善に努めてきた。そして、昨年の快挙に結びつけた。
ただ、44秒台で走っても世界選手権の決勝に進めなかったように、世界との差は痛感していた。
「前半に余裕を持たせるとはいえ、世界と比べると遅すぎると思っていた。余力を持ちながらも、前半からしっかり勝負できるレース展開にしたい」
このように考えており、今回の日本選手権では、また新たな試みをしていた。
「中盤で意識的に少し速度を上げようとした。今回初めての試みだったので、それがうまくいかず、そこで力を使い過ぎてしまい、後半に力があまり残っていなかった」
予選の走りはうまくいかず、「レースの組み立て方0点」と厳しい自己評価だった。
だが、日本記録を樹立する前にも、失敗レースは何度もあった。その度に修正を重ねてきた。佐藤は失敗を無駄にはしない。今回の走りも必ず血肉とし、佐藤の400mを完成させるはずだ。
日本選手権は三者三様の結果となったが、それぞれのコメントを紐解くと、見据えているのはやはり世界の舞台。日本選手権は通過点に過ぎない。パリ五輪は個人で決勝に進むことはもちろん、リレーのメダルも目標に掲げている。
男子4×400mリレーのメンバーには、この3人のほか、オレゴン世界選手権4位のメンバーの川端魁人(中京大クラブ)、日本選手権の予選で佐藤拳太郎に先着し、決勝で3位に入った吉津拓歩(ジーケーライン)が選出された。
パリ五輪のトラック種目のフィナーレを飾るのが4×400m(正確には女子4×400mがあとだが)。この男たちがベストパフォーマンスで日本中を沸かせるはずだ。
著者プロフィール
和田悟志 (わだ・さとし)
1980年生まれ、福島県出身。大学在学中から箱根駅伝のテレビ中継に選手情報というポジションで携わる。その後、出版社勤務を経てフリーランスに。陸上競技やDoスポーツとしてのランニングを中心に取材・執筆をしている。
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