箱根駅伝で駒澤大・藤田敦史監督が「三本柱」を1区から配置した理由 感じていた不安とは (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi

【"三本柱"を1区から並べた意図】

――三本柱を1区から3区まで配置したのは、万全を期す思惑だったと思いますが、篠原選手を4区に配置するのではないかという見方もありました。

「当初のプランとしては、篠原の4区ももちろん考えていました。出雲と全日本は使わなかったけど、(当初1区の配置だった)白鳥哲汰(4年)の状態が良かったので白鳥、芽吹、圭汰、篠原、山川で往路を考えていた。ただ、全日本が終わったタイミングで山川に不安が出て11月は練習ができなくなった時に、"これは金子伊吹(4年)を(5区で走れるよう)作り込んでいくしかないな"と考えました。2年前の5区区間4位の金子はこの4年間でも一番状態が良かったですし、今年の山(の戦い)はレベルが高くなる前評判もあったので、悪い状態で山川を5区で勝負させたくなかった。上り(のコース)では股関節に負担がかかるのでちょっと怖いなと。だからわりと早い段階で金子の5区を考えていました。

 金子は、結果的には前回大会の山川ぐらいで走ってくれたのでよかったんですけど(1時間10分44秒・区間3位)、山川と比べると不安はあった。5区に金子を置くことでチームとしても『お前たちが貯金をつくるんだよ』という意識を持たせて篠原と芽吹、圭汰を並べて少しでもリードを稼ぎ、万全ではないとはいえ山川も4区ならしのいでくれるという思いがあって、あのオーダーにしました。でもその目論見は3区で逆転されたので、私の見通しが甘かったということです」

――青学大のように"しのぐ1区"ととらえ、2区の鈴木選手から勝負をかけるという選択肢はなかったのですか。

「それも考えました。1区で多少遅れたとしても1分以内で収めてきたら、芽吹の2区なら1時間6分30秒は硬いという見通しがあったからです。そこで前に出て圭汰でズドンと行くイメージはありました。ただ、芽吹にとっては初めての2区だったんですね。私も2区を2回走っていますが、2回目の方が圧倒的に走れるんです。権太坂まではある程度力を使わずに行き、上り終わってからの下りから力を入れて、上りが続く最後の3kmはもう根性で粘るということは、実際に1回経験したことでわかる。でも芽吹は初めてだし、彼の勝ち気な性格からすると前半突っ込んでしまって最後は打ち上がる(ペースダウンする)かもしれないという心配もありました。

 だから篠原を1区に置いて確実に先頭で行けば、芽吹も落ち着いて入れると考えていたのです」

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