大迫傑「東京五輪は他人の価値観に乗っかってしまった」パリ五輪出場については「世間と僕の熱量とには差がある」 (3ページ目)

  • 和田悟志●取材・文 photo by Wada Satoshi

【パリ五輪は「6メジャーズ+1」】

 大迫は2021年の東京五輪の男子マラソンに挑む前に引退を表明。ひとつのゴールとしていた東京五輪で6位入賞を果たしたあとに一度は現役を退いたものの、翌2022年2月に現役復帰を表明した。

 この時には、3年後に迫る「パリ五輪は間に合わないかもしれない」ということを話していた。実際には、すぐに第一線で活躍を見せており、十分に間に合ったのだが。

 そもそも、大迫にとってパリ五輪はどんな位置づけだったのだろうか。

「僕は復帰した時に、いろいろなところで『パリ五輪は急すぎるかもしれない』とか『その先の東京世界陸上とかを目指す』ってことを話したと思うんですけど、(パリ五輪が)近づいてくると、『どうしても大迫くん走りたいんでしょ』とか『それ(五輪)がないとダメなんでしょ』みたいに思われがちです。

 でも、マラソンには『6メジャーズ』もありますし、いろんな活躍の場がある。僕は、何としても(パリ五輪に出たい)っていうふうに思っているかっていうと、そうではありません。そこは世間と僕の熱量とには差があるかな......。

"よーいドン"で順位を競うレースなので、そこに対してのモチベーションはありますが、別にパリでなくてもいい。あらゆるところでベストを尽くし、世界に近づけていくだけ」

 東京出身の大迫にとって地元開催の東京五輪はやはり特別なものだった。パリ五輪にも、もちろん代表に選出されるのであれば、高いモチベーションで臨むだろう。ただ、東京五輪と比べると「よりフラットな」視点で捉えており、パリ五輪は「6メジャーズ+1ぐらいの認識」なのだと言う。

 6メジャーズとは、正確にはアボット・ワールドマラソンメジャーズのことで、ボストン、ロンドン、ベルリン、シカゴ、ニューヨーク、東京の6大会で構成されている。シリーズ戦になっており、この6大会および五輪または世界選手権の成績で総合優勝が決まる。1カ国3人ないし4人しか出場できない五輪とは違って、上位を東アフリカの選手が席巻することもあるほど、ハイレベルなレースが繰り広げられている。

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