箱根駅伝予選会への出場は「チームのプラスにならないんじゃないか」 関西の雄・立命館大のコーチが明かす挑戦までの議論と経緯 (2ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Sato Shun

――練習メニューでは、ハーフを走るために距離を増やす感じだったのでしょうか。

「とにかく走ることが基本なのですが、なぜ長い距離を走れないのかとなった時、体ができあがっていないからなんです。そこで筋力強化をしつつ、走る量も並行して増やしていきました。本来だとある程度のペースで距離を踏むのが必要ですが、いきなり増やすと故障しかねないので、ダウンジョグも含めて距離を増やしていく感じにしました。ダウンでも走る距離は変わらないですし、故障の予防になります。月間走行距離でいうと600から700キロですね。関東とはベースが違いますが、600キロでも夏合宿に入れば800キロ近くにいけるので」

 箱根予選会対策として、夏合宿は例年1回のところ2回行なった。ハーフ対策として25キロの距離走は、例年12回のところ今回は6月末から2週間に一度、計7回ほど行ない、選手は長い距離への抵抗を感じずに走れるようになった。20キロ走の際はビルドアップでラストを320秒に上げて追い込んだ。また、夏前は大腿骨などの疲労骨折が目立っていたのでポイント練習以外は薄底のシューズを履き、足を作ることを重視してきた。

――予選会への取り組みでチームの変化を感じたりしていますか。

「出雲や全日本のメンバー争いに関わってこれない選手のモチベーションを維持するのはすごく難しいんです。でも、今回は予選会があるということで自分が走るんだと15番手前後の選手が高いモチベーションで練習に取り組んでくれています。それがチーム力の底上げにつながるのを感じていますし、これは今年だけではなく、来年のチームにも影響していくと思います」

――選手自身の変化は感じますか?

「僕が就任した当時、選手はあまりしゃべらず何を考えているのかわからない部分があったり、外の目を意識していない発言が多かったんです。でも、箱根予選会に出るということでメディアにも取り上げてもらえるようになり、選手たちは自分の意見をしっかりと伝えられるようになってきました。また、メディアに露出することで自分の発言の大きさや影響力を理解できるようになりました。選手の精神的な成長を促す意味でも、箱根へのチャレンジはすごく大きいと思います」

 残念ながら関東以外の大学に箱根駅伝への門戸が開かれているのは、今のところ100回大会のみだ。今後はわからないが、まずは一度切りの挑戦になる。

――今回の予選会への挑戦は、チームに何をもたしてくれるのでしょうか。

「予選会を通る、通らないだけで考えると、たぶんやらないほうがいいんです。でも、距離を踏んで走力が上がったり、精神的な成長を見せたり、学生たちの育成成長という部分では非常に大きなものをもたらしてくれるので、僕は1回でも価値はあると思っています。周囲からは好意的に見ていただいています」

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