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箱根駅伝予選会に地方から参加する札幌学院大の歴史的チャレンジ「とにかく爪痕を残したい」 (3ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Sato Shun

――選手をスカウトする上で箱根ブランドは大きいですか。

「間違いなく大きいですね。最初、うちに来たいと言っていてもタイムが出た瞬間、関東の大学が勧誘に来たら一瞬で考えが変わります。高校生にとって、箱根は憧れの舞台ですから」

 札幌学院大駅伝部には、セレクションもタイムによる入部制限はない。基本的に「来たいと意思表示してくれた学生はウェルカム」という。授業料免除など特待生制度はあるが、陸上部だけの寮はなく、学生は大学の寮か大学近郊のアパートで自炊をしながら生活している。

――学生の多くは、道内からですか。

「北海道と東北で、ほぼ100%です。東北も福島までで、それから南は関東に行きますね。北海道は高校生でいい選手がいて、中学生もレベルが高いんですよ。今年なんか、全中で優勝している選手が多く出ているので、優秀な子がいるんです。でも、中学高校大学という育成強化の連携がうまく取れていないので、優秀な選手は道外に流れていく。長野県のようにすべての世代において育成の引継ぎがきちんとできるようになると、北海道のレベルはさらに上がっていくと思います」

――北海道は、大学間で横のつながりはあるのでしょうか。

「前は北大(北海道大)や北海道教育大など国公立の大学が強かったので、大学間で繋がって競技レベルを上げていくということが難しかったですね。今は星槎道都大や札幌国際大など私立大学が陸上に力を入れ始めていますが、大学間の連携はあまりないです。ただ、このままでいいとは思っていないので、北海道学連が他地区学連に追いつき、追い越せるように他大学と協力してやっていかないといけない。そうして、道内の大学を盛り上げて、能力がある学生が北海道の大学を目指してくれるようにしていかないといけないですね」

 札幌学院大学の構内にあるグラウンドは土のトラックだ。近くの野幌森林公園内にはクロカンコースがあり、距離走でよく使用している。冬は雪道を走ったり、ドーム内の周回コースで練習をしている。関東や関西の大学と比較すると、決して恵まれた環境ではないが、来るべき予選会に向けて、着々と準備をしている。

――出走する14名は監督の中では、すでに決定していますか。

34分を切れる選手が14名以上いるので、その中からの選択になりますが、全日本大学駅伝で誰がどこを走るのかというところを加味しながらスタッフと一緒に考えていく予定です」

――今回は、13校に箱根駅伝の出場権が与えられます。順位の目標はありますか。

「順位、結果は問いません。仮に下位でもこの予選会に挑戦するということ自体が本当に歴史的なことですし、誇れることだと思うので、走る学生には今後の人生につなげられる手応えを感じてもらえればいいかなと思います。ただ、出るからには、うちが出たということが少しでもみなさんに知られるようにしたいですね。最初はトップ集団の中で走り、できるだけテレビに長く映っているとか、とにかく何かしら爪痕を残していきたいと思っています」

後編に続く>>箱根駅伝予選会へ向けて札幌学院大のエースの意気込み「地方の大学、なめんなよ!」

著者プロフィール

  • 佐藤 俊

    佐藤 俊 (さとう・しゅん)

    1963年北海道生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、出版社を経て1993年にフリーランスに転向。現在は陸上(駅伝)、サッカー、卓球などさまざまなスポーツや、伝統芸能など幅広い分野を取材し、雑誌、WEB、新聞などに寄稿している。「宮本恒靖 学ぶ人」(文藝春秋)、「箱根0区を駆ける者たち」(幻冬舎)、「箱根奪取」(集英社)など著書多数。

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