三浦龍司が高地トレーニングをアップデート 世界陸上までにキレを取り戻せるのか (3ページ目)
【昨年の雪辱を晴らす世陸に】
標高について、どこまで降りてくればスピードを出せるスピード練習ができるのか。その塩梅が難しいと長門監督はいう。東京五輪前は、標高1000mの富士吉田で最終的に刺激を入れて調整していた。1000mを下ったところが理想なのか、そこは最終的に三浦とも話をして決めていくという。北見でのレースを終え、まずは障害の練習を入れていく。その後、もう一度湯ノ丸に入り、最後に平地でスピードの刺激を入れて、ハンガリーに向かう予定だ。
「世陸は、楽しみです」
三浦は、自信に満ちた笑みでそう言う。
6月のダイヤモンドリーグのパリ大会3000m障害で8分9秒91の日本記録で2位に入った。いい流れを自分でも感じているらしく、表情にも余裕がある。
「今年はパリで良い手応えを掴んだので、その感覚は大事にしたいと思いますし、これが世界陸上につながれば、僕としては嬉しいので、その感覚を無駄にしないように、失ってしまわないようにやっていきたい」
ブダペスト世界陸上は、三浦にとってどういう大会になるのだろうか。
「世陸に去年、出場したんですけど予選落ちしてしまい、自分の理想や目標には程遠い結果になってしまった。今年はさらなるレベルアップができているかなと思うので、その成長を見せられるような走りをしたいと思います」
一般的に同じトレーニングを続け、アップデートをしていかないのは現状維持ではなく、後退だと言われている。三浦は、もうワンランク上の世界を見るために高地トレでの練習方法や調整方法をいろいろと模索中だ。ブダペストでは、これまでの結果や取り組みが融合すればユージーンの雪辱を晴らせるだろうし、その先のパリ五輪にもきっとつながるはずだ。
著者プロフィール
佐藤 俊 (さとう・しゅん)
1963年北海道生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、出版社を経て1993年にフリーランスに転向。現在は陸上(駅伝)、サッカー、卓球などさまざまなスポーツや、伝統芸能など幅広い分野を取材し、雑誌、WEB、新聞などに寄稿している。「宮本恒靖 学ぶ人」(文藝春秋)、「箱根0区を駆ける者たち」(幻冬舎)、「箱根奪取」(集英社)など著書多数。
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