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三浦龍司が高地トレーニングをアップデート 世界陸上までにキレを取り戻せるのか (2ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by 森田直樹/アフロスポーツ

【高地トレには確かな手応え】

 湯の丸の標高は1700mで、高地トレーニングで有名なコロラドのボルダーより若干高い。慣れるまでは呼吸の苦しさを感じるが、持久力の向上につながるのでマラソンを走る選手も、湯ノ丸で合宿を張ることが多い。近くには菅平もあり、標高を落として練習ができるなど、環境を選べるのも大きい。現地にはトラックの他にウッドチップを敷いた林道コースやクロカンコースがある。クロカンコースは傾斜がかなりあり、高地と相まってかなりキツいコースだ。三浦は、ここを拠点にスピード練習やペース走を行ない、クロカンも走っていた。

 初の試みながら、三浦は高地トレーニングの手応えを感じているようだ。

「この標高で練習をするのはまだ経験が浅かったので、こういうものかっていうのを理解することができました。有酸素運動をするだけで、すごく追い込まれたような気持ちにもなりました。これを地上と同じぐらいの負荷に近づけたり、体の感覚を取り戻すことができれば、さらにゆとりが持てたりとか、様々なところでプラスに働くことが多いのかなと思うので、これからも積極的に取り組んでいきたいです」

 一方で、今回のレースのラスト100mで赤崎にもう一段突き放されたように、ラストのキレにいつもの三浦らしさがなかった。いつもはロケットのようにスピードが増してフィニッシュするが、今回はその伸びを欠いていた。

「湯の丸から降りて来て、ちょっと動き出しが悪かったり、疲労感を少し感じていた部分はあったんですけど、慣れればよくなっていくと思います」

 高地トレーニングの影響もあり、それほど気にしていない様子だ。

 長門監督も「ぜんぜん悪くないと思いますよ」と表情は明るい。

「キレに関しては、本人も『あれっ?』というのがあったと思います。でも、レース全体に関しては、プランどおりにできたので、全然悲観するところはないです。ラスト230秒で上がればいいかなと思っていたんですが、233秒ぐらいだったので、そこもほぼクリアできてよかったですね。最後のところはちょっと重さが残ったのかな。三浦らしいところが見られなかったというか、本来のキレじゃなかったかなと思います。でも、余裕はありましたからね(笑)」

 高地から降りてきてのレースでの結果を踏まえて、三浦も長門監督も手応えは上々というところなのだろう。ただ、ラストのキレに本来の鋭さが見えなかったのは、「今後、考えていく必要がある」と長門監督が語る。

「基本的に標高が高いと、スピード練習でスピードを出しづらいということがあったので、そこは調整していく必要があると思います。もうちょっと標高を落としてスピード中心のポイントをやるべきかなとも思いました。一度、小諸(標高1000m)まで降りたんですけどね。クロカンも傾斜がきついので、あそこでちょっと重さが残ってしまった。それで、ちょっと動かしにくいという感じがあったのかなと思います。あとは血液検査をして、数値と本人の感覚を検証してみるのが大事かなと思います。でも正直、心配はしていない。あとは、キレだけ戻ればいいので」

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