東洋大・酒井俊幸監督が箱根駅伝で抱いた危機感。鉄紺のチームが狙うのは優勝、「早く本来の景色に戻さなければいけない」 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Kyodo News

 ほかにも2年連続で6区を走り、全日本では5区を区間5位で走っていた九嶋恵舜(3年)も起用できなかった。松山抜きでもチームエントリー時点では区間ひと桁順位で走る選手を揃えて戦える実感を持っていたが、結局、起用したかった選手のうち4~5人が走れない状況に。酒井監督は「これまでで一番手応えのない箱根になってしまった」と話す。

「エース抜きで苦しい布陣になるのは覚悟していましたが、ここまで起用できないとなるとチームマネジメントが課題になると思います。ただ1区は出雲と全日本でも出遅れていたので、箱根はなんとしてもそういう流れにはしたくなくて。1区の児玉悠輔(4年)に関しては練習もすごく好調で、チームで一番いいくらいの状態だったので『スローペースでもハイペースになっても対応できるのは彼しかいない』と自信を持って起用しました。

ただ、チームが苦しい状態のなかで複雑な心境もあったと思うけれど、そこで出遅れたのは痛手でした。2区の石田洸介(2年)も調子は非常に悪かったけど、ほかに起用できる選手がいなかったことと、彼自身が2区への覚悟ができていたので起用しましたが、2区終了時点までは厳しい展開になるかと予想していました」

 それでも、3区から上げていけばシード権のチャンスは十分にあると考えていたという。

「今回、下から上がっていって感じたのは、15位くらいまではスーッと上がって行けるけど、そこからシード圏内に行くには、やはりきちんとした手応えがある区間が出てこないと上がれないということでした。3区の小林亮太(2年)は、よくあの(前が見えない)位置から16位まで上げてくれたなと思います」

 4区の柏優吾(4年)が区間13位ながらも総合順位を14位まで上げ、5区の前田義弘(4年)が区間5位の走りで11位まで上げてシード権が見えてきた。酒井監督は、前田の5区は勝負をかける起用だったという。

「5区は往路で一番稼げる区間だと考えていました。身長190cm(の選手)の登りは普通セオリーではないけど、彼は1年の時から登りの練習はけっこう強かったので。彼の場合、12月になってフィジカルもしっかりしてコンディションも出雲や全日本より上げてきて、9区で区間5位になって調子のよかった前回の箱根の時くらいに噛み合ってきたので、彼を5区にして思いきって勝負しようと思いました。8区で区間賞を獲った木本大地(4年)も候補のひとりでしたが、木本よりトータルで見れば調子がいいくらいでした」

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る