箱根駅伝で好走したルーキー5人。駒澤大は「2年連続3冠」、黄金期続行に現実味 (3ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by 日刊スポーツ/アフロ

 明大の森下翔太(1年)は3区4位とすばらしい走りでチームの順位を13位から7位にジャンプアップさせた。全日本大学駅伝で駅伝デビューを果たし、この時は1区8位の走りを見せ、箱根での出走を勝ちとった。同世代には吉川響(1年)がいるが、彼も全日本で駅伝デビューを果たし、6区7位とまずまずの結果を出した。吉川は箱根では上りの適性から5区に起用された。残念ながら区間15位と自分の力を発揮できなかったが、来季は森下と吉川が明大の主力となり、箱根でシード権確保を実現する走りを見せてくれるだろう。

 今回の箱根でもっとも活躍したルーキーは、6区区間賞を獲得し、駒澤大総合優勝、3冠達成に多大な貢献をした伊藤蒼唯(1年)だ。当日変更で帰山侑大(1年)に代わって出走、最初の上り区間でもたつく感があったが、下り区間に入るとスピードを増し、後続の中央大、青学大との差をどんどん広げていった。復路で優勝の流れを作った走りは、とても1年生とは思えなかった。

「自分は上りがそんなに得意なタイプではないのですが、それでも最初は突っ込んでいく感じで入って、あれが今の僕のベストの走りでした。うしろが若林(陽大・中央大)さんで4年生の経験者でしたので、不安はなくはなかったんですが、自分のよさはフレッシュさですし、下りは確実に離せるという自信があったので、そのとおりの走りができたと思います」

 山の下りは、大きなストライドで落ちるように下っていった。どんどん加速する勢いで後続との差を広げ、山野力(4年)は「6区の伊藤の走りが大きかった」と最高の形で復路のスタートをきれたことが優勝につながったと語った。そんな伊藤が自分の走りに自信を持てたのは11月の日体大記録会での10000mだった。13日前に世田谷ハーフを走り、64分15秒で11位とまずまずの結果を出したあとだったが、28分28秒15の自己ベストを出した。

「そのタイムを出してから自信がついて意識が変わりました。高校では(現在チームメイトで同級生の佐藤)圭汰とか手が届かない存在でしたけど、28分台のPBを出し、6区区間賞を獲れたことで圭汰や山川(拓馬・1年)に少しは追いつくことができたのかなと思います」

 佐藤は出雲駅伝2区で区間賞、山川は全日本で4区区間賞、伊藤は箱根6区で区間賞を獲った。結果でも彼らに並んだわけだが、6区の再チャレンジについては、「今は足がボロボロで、来年もまた6区というふうには今は思えないです」と苦笑した。だが、下りのセンスは抜群で、次回も走れば区間記録を狙えるだろう。また、山川が5区区間4位と好走したが、山の特殊区間は来年も山川と伊藤がハマれば、駒澤大の2連覇はより現実味を帯びてくる。

「僕らの学年は、圭汰や山川という強い選手がふたりいるので、まずはそこに追いつき、追い越すことを目標にして、次の箱根では平地でも走れるぐらいの走力をつけていきたいと思います。そのくらい成長しないと連覇することができないと思うので」

 来年、伊藤、山川に加え、帰山、佐藤ら新2年生が箱根をしっかりと走ることができれば、2年連続での3冠は、決して難しいミッションではないだろう。

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【筆者プロフィール】佐藤 俊(さとう・しゅん)
1963年北海道生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、出版社を経て1993年にフリーランスに転向。現在は陸上(駅伝)、サッカー、卓球などさまざまなスポーツや、伝統芸能など幅広い分野を取材し、雑誌、WEB、新聞などに寄稿している。「宮本恒靖 学ぶ人」(文藝春秋)、「箱根0区を駆ける者たち」(幻冬舎)、「箱根奪取」(集英社)など著書多数。

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