男子短距離の新戦力候補3人。世界選手権4×100mリレーの戦力となるか (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 高橋学●撮影 photo by Takahashi Manabu

男子短距離にも新戦力候補

 10秒10の自己ベストで2位になった坂井は、2019年、関西大学4年の時、鋭いスタートダッシュを武器に、10秒12を出して注目された選手。そのあとは伸び悩んでいたが、「得意のスタートを磨きつつ、後半をもっと走れるように今年の冬からは120mや150mを入れるようになった」と、後半の減速を押さえられるようになったことが自己記録更新につながった。

また、昨年は高校生ながらも東京五輪リレー代表の補欠だった柳田が、準決勝より0秒03タイムを落としながらも3位をゲット。「日本選手権は2年連続7位だったので、3位になれたのはうれしい。やっぱり決勝になると独特な雰囲気があって『力及ばず』という結果でしたが、勝たなければ世界選手権代表には入れないので、しっかり勝負した」と明るい表情で話す。目標にしていた標準記録突破はならなかったが、リレー代表には大きく前進した。

 大会3日目からの200mも、100mと同じようにこれまでとは違う顔ぶれが混ざる展開になった。11日の予選では、東京五輪出場の山下潤(ANA)が敗退し、小池祐貴と飯塚翔太(ミズノ)は着順ではなくタイム上位のプラス2名での決勝進出。だが12日の決勝では、カーブがきつくて不利な2レーンだった小池が2位になる意地を見せた。

「ウォーミングアップ中に、今日できるベストのレースは何かとよく考えて、スタートラインに立った時に、『50mまでに全員を抜き、そこから考えよう』という感じで走りました。ラスト20〜30mで足が動かなくなりましたが、外側のレーンなら最後まで余裕を持って行けたと思うので、絶望的な状況でもないかなと思います」

 20秒62で参加標準記録は突破できなかったが、世界ランキングで出場権を獲得する可能性を極めて高くした。

 その小池を逆転して優勝したのは、雨のなかの前日の予選で3レーンながらもトップタイムの20秒48を出していた上山紘輝(住友電工)だった。「前半は少し押さえて、コーナーの抜け出しからスピードを上げた」という走りで追い風1.7mの条件のなか、小池に0秒16差をつける、自己ベストタイの20秒46で初優勝。

 近畿大4年だった昨年は日本選手権5位と、日本インカレ2位から成長を遂げ、その理由を上山はこう話す。

「社会人1年目で環境が変わって大変なところはありましたが、しっかり練習が積めるようになり、苦手だったウエイトトレーニングも『勝つためにやるんだ』と思い、やれたことが大きいです」

 昨年までは20秒69だった自己ベストも、今年は5月3日の静岡国際で20秒46まで伸ばしていた。その好調を維持できたことで、実績のある選手たちを破ることができた。

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