「歯科医か、ハードルか」110mH日本新の金井大旺が明かす進路選択

  • 宮部保範●取材・文 text by Miyabe Yasunori
  • photo by Sankei Visual

文武両道の裏側 第2回
陸上 男子110mハードル 金井大旺選手(ミズノ所属)

 学業とスポーツを両立してきたアスリートに、「文武両道」の意義、実践法を聞く連載企画。第2回は陸上男子110mハードルの日本記録保持者・金井大旺(たいおう)選手にインタビュー。自身も勉強とスポーツを両立させた経験を持つ、元スピードスケート世界記録保持者の宮部保範(アルベールビル五輪、リレハンメル五輪日本代表)が、金井選手の半生に迫った。

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【陸上との出会い】

── 2021年4月29日、広島で開催された第55回織田幹雄記念国際陸上競技大会。男子110mハードル決勝で、日本記録が更新された。その新たな扉を開いたのが、北海道出身の25歳、金井大旺だ。
4月29日、織田幹雄記念陸上で日本新記録を樹立した110mハードル・金井大旺4月29日、織田幹雄記念陸上で日本新記録を樹立した110mハードル・金井大旺

 金井は、函館で歯科医院を営む家に生まれ、姉と妹のいる3人きょうだいのひとりとして育った。歯科開業医の父の姿に憧れ、幼い頃から自らも歯科医になることを決めていたという。一方、ハードルのおもしろさに目覚めたのは小学生の頃。小学校6年生の時に出場した全国大会(80mハードル)で2位になった。

金井:小さい頃から走るのは速かったですね。小学3年生の時に地元の「千代台陸上スクール」に入って、週に5日ほど練習に通っていました。

 小学生時代は習い事としてほかに、ピアノや空手、英会話もやっていました。特にピアノは好きで、クラスや学年で合唱する際に伴奏を担当したこともあります。歌うのが得意じゃなかったので、「ラッキー」という思いもありましたが(笑)。勉強に関しては、授業はしっかり聞いてましたね。中学受験をするつもりはなかったので塾には通いませんでしたが、算数や国語のオンライン教材を使って勉強することもありました。
 
 でも、やっていて一番楽しかったのは、成長が「結果」として明らかになる陸上でした。とくに小学生の頃は体の成長が著しいので、自己ベストを頻繁に更新できた。その喜び、達成感がたまらなかったんです。ただ、6年生の時は、身長が147cmくらいしかなかった。だから、大会に出てスタートラインに並ぶと、(身長が低い)自分だけボコッと凹んでいて(笑)。そのハンデを埋めることが当時のモチベーションでした。

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