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柏原竜二は震災後の箱根駅伝で区間新。恩師2人の言葉と東北への想いを胸に走った (4ページ目)

  • 星野恭子●取材・文 text by Hoshino Kyoko
  • photo by AFLO SPORT

「被災された方たちに『頑張ってほしい』という気持ちを、どうしたら誤解なく伝えられるかと悩んだ末の言葉でした。『ちゃんと伝えられたかな』と最初は不安でしたが、後日、福島や東北から感謝の手紙を何通もいただいたんです。僕らの想いは届いたんだ、優勝できて本当によかったと、ほっとしたことを覚えています」

 そして、2021年。柏原さんは今、「復興という言葉を、どこまで使い続けるのか、定義が難しいと感じています」と話す。

 被災地は広範囲に渡っており、復興の進行具合は各地で異なるのが現状だ。福島県に限っても、新築の建物で再スタートした地域もあれば、福島第一原発周辺ではまだ避難指示が解除されていない地域が残る。今も福島県内外での避難生活を送る人もいれば、新天地で根づいた人もいる。

「元に戻っていない地域は戻さなければいけない。でも、戻すだけでなく、新たなことにも取り組んでいくフェーズに来ていると感じています。10年の節目にあたって、復興に代わる新しい言葉を見つけることが必要かもしれません」

 柏原さんは新しい住民や観光客を増やすなど一歩踏み出す取り組みとして、「老若男女が集まれるスポーツは大きなフックになる」といい、マラソン大会の前後にグルメツアーや観光などを組み合わせたスポーツツーリズムの可能性に触れた。

「いわきでマラソン大会を走った後にバスで郡山に移動して、翌朝7時にオープンする喜多方ラーメン店で人気の『朝ラー』を楽しんだり。めちゃくちゃ美味しいんですよ。ゲストと一緒に回ってもいい。それは、『いい街だね』と感じてもらうきっかけになるかもしれません。こうしたことが、地域活性化につながればうれしいですね」

 故郷への思いが強いからこそ冷静な眼差しで、今と、未来を見つめている。

プロフィール
柏原竜二(かしわばら・りゅうじ)
1989年7月13日生まれ。福島県いわき市出身。中学・高校から中長距離ランナーとして活躍後、東洋大学1年時から箱根駅伝に出場し、5区で区間記録更新の活躍で初の総合優勝へ導く立役者に。その後、4年連続で5区を走り、区間新を3度更新する活躍で、「山の神」と称される。2008年世界ジュニア10000m7位、2009年ユニバーシアード大会8位入賞するなどトラック種目でも活躍。2012年、大学卒業後、富士通に入社。駅伝などで活躍後、2017年に現役を引退。現在は同社企業スポーツ推進室に在籍し、スポーツ活動全般への支援、地域・社会貢献活動をはじめ、陸上競技の普及活動にも携わる。

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