2021.03.02

「恥ずかしいから褒めないで」鈴木健吾の大学時代から日本記録更新までの軌跡

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Kyodo News

 今回が琵琶湖畔を走る最後のレースとなった「びわ湖毎日マラソン」。その終焉を彩るべく、マラソン挑戦5回目の鈴木健吾(富士通)が昨年3月に大迫傑(Nike)が出した日本記録を33秒更新する2時間04分56秒で優勝を飾った。

日本記録を更新してもなお、「まだまだこれから」と語った鈴木健吾 鈴木は、「ベストが大学4年の記録(2時間10分21秒)なので、その更新は目標にしていましたが、今回はタイムより順位を重視して、秘かに優勝を狙っていました」と話す。

 今回のびわ湖毎日マラソンには、東京マラソン中止と別府大分マラソン延期の影響で日本のトップ選手が終結し、日本記録更新を目指す1km2分58秒を目標にペースメイクされた。

 そんな高速レースの中でも鈴木は冷静だった。これまで出場した4回のレースでは、30~35kmから失速していたこともあり、前半の大集団の中で風をよけて走り、ペースメーカーの細かなペース変化にも対応せず、体力を温存していた。

 さらにペースメーカー3人のうち2人が抜けた25kmあたりで、井上大仁(三菱重工)が仕掛けた時も動く気配すら見せなかった。

 事前に福島正監督と「25kmと30kmで集団が動くだろうから、冷静に判断しよう」と話していたことを明かし、「まだ対応すべきではないと感じ、余力はかなりありましたが、我慢して様子を伺っていた」と振り返った。

 鈴木が動いたのは、先頭が3人まで減った36kmすぎ。「MGC時の(中村)匠吾さんのように一発で抜くタイミングを見図り、『いける』と思ったら仕掛けようと思っていました。35km通過の時に周りを見て37kmくらいで行こうと考えていましたが、給水を失敗したので、他の選手が給水している間に仕掛けました」

 それまでの1kmよりペースを11秒上げて、給水失敗を逆手に取った。38kmでは後続を突き放すキレのあるスパートをかけ、その後もペースを緩めず逃げ切った。