2020.12.28

「日本人選手は弱いから」。井上大仁が
語る「強くなりたい」という覚悟

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Sato Shun

知られざる実業団陸上の現実~駅伝&個人の闘い
三菱重工マラソン部(2)

 井上大仁(三菱重工マラソン部)は、日本マラソン界のトップランナーのひとりである。

 山梨学院大時代は4年連続で箱根駅伝を走り、三菱重工マラソン部の前身であるMHPSに入社2年目の九州実業団対抗駅伝で3区の区間賞を獲り、チームの初優勝に貢献。東京マラソン2018で2時間6分54秒の自己ベストを更新すると、同年8月にジャカルタで開催されたアジア大会では金メダルを獲得した。

2018年にジャカルタでのアジア大会で金メダルを獲得した井上大仁2018年にジャカルタでのアジア大会で金メダルを獲得した井上大仁  そんな井上にとって三菱重工マラソン部は、大学時代から気になっていたチームだった。

「大学時代からマラソンで活躍したいと思っていたので、マラソン部のあるMHPSは意識していました。実際、練習や合宿に参加させてもらったのですが、マラソンをやるうえで大事な練習が詰まっていた。早い段階で気持ちは固まっていました」

 大学卒業後、希望どおり入社を果たしたが、1年目から大活躍とはいかなかった。

「最初のシーズンは駅伝が終わったあとにマラソンに出て......かなりダメージを受けました。駅伝はマラソンで走り込む時期に開催されますが、駅伝を挟むことでいいモチベーションをキープしながら走れる。また、マラソンを走って結果を出すのもチームのためになる。そういう考えができるようになったのは入社2年目からですね」

 そんな井上も6年目を迎えた。チーム最年長は岩田勇治(33歳)で、さらに井上の上には木滑良(きなめ・りょう)主将ら5人いる。チームでは中堅層になるが、エースは井上である。もちろん、本人も強く自覚している。

「みんなを引っ張り、駅伝にしろ、マラソンにしろ、レベルを上げていくことが自分の役割かなと思っています。絶対にチームメイトに負けられない意識でやっているので、苦しくなる時はあるのですが、それを苦痛に感じたことはないです。チーム全体でやる時はそういう弱みを見せないようにしています」

 昨年9月、井上は東京五輪のマラソン代表選手を決めるMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)で期待されながらも、まさかの27位に終わってしまった。

「注目されることに対して冷静になれず、周囲に振り回されてしまった。勝たないといけないという気持ちが先行し、それをコントロールできなかった。無理してたところがあったと思います」