MGC勝者・中村匠吾の武器はロングスパート。周到な計画で才能が開花した (3ページ目)
2戦目は2018年9月のベルリンマラソンを選んだ。しかしこの時、フィニッシュタイム2時間6分台のペースで引っ張るはずのペースメーカーが機能せず、中村はスタート直後から終始、単独走を強いられた。それでいて2時間8分16秒(4位)の好タイム。大八木監督は、ここがひとつのターニングポイントになったと話す。
「ほぼ最初から最後までひとりで走り切って、2時間8分台。スタミナがついたなと感じました。実際、本人もマラソン練習の手ごたえを実感し、自信を得たようです」
奇しくも、ここでのラスト2.195㎞も6分46秒だった。だが40㎞まではびわ湖の時よりも速いペースで刻んでいる。それでもラストをまとめた点に成長の跡があった。
ベルリン後に、練習で40㎞を越える距離走にも取り組むようになった。2019年3月の東京マラソンこそ2時間14分52秒(15位)と力を出し切れなかったが、その敗戦によりMGCに向けて、中村は練習のレベルをさらに上げていく。
「東京マラソンでの失敗でスピード持久力を上げることが大事と実感したので、練習の距離走でも最後を上げたり、インターバルトレーニングなどのスピード練習でも本数、距離を増やしました」
中村の1万mのベストは2013年に出した28分05秒79。だが、同じ年に27分38秒31を出し、その後も27分台を連発している大迫に比べれば、トラックのスピードでは敵わない。事実、ふたりが同走した2017年7月の1万mのレースでは大迫が27分46秒64だったが、中村は28分16秒01。5000mのベストも中村が13分38秒93(2016年)に対し、大迫は13分08秒40(2015年、現日本記録)と約30秒の開きがある。
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