一山麻緒を支えた監督との絆。ぎくしゃく関係も乗り越え記録は生まれた (4ページ目)

  • 折山淑美⚫取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Naoki Morita/AFLO SPORT

 そして7本目と8本目は30km以降の勝負を想定して、自由に行かせた。一山が「監督の鬼メニュー」と話す厳しい練習だが、最後の2本を、平地に換算すれば5km16分そこそこのペースまで上げて走ることができていた。

「これまでのレースでも、30kmの給水からレースが動くので、先頭で給水を取り、そこから勝負しようと思っていました。だから29kmくらいから、『自分で行くんだ』と、気持ちで行った」と言う一山は、29㎞付近の交差点で、永山監督から「ここから行っていいよ」と声を掛けられると、一気にギアを上げた。

 それまで3分20秒台後半に落ちていたペースを、ペースメーカーを煽るような走りで、3分14秒に上げた。そして、給水後もそのペースを維持し、35㎞までを16分14秒で走ると、2位との差を25秒まで開き、完全な独走態勢を作った。

 大阪で走った松田とのタイム差も、35kmでまったく同じ1時間56分45秒にすると、そこからの7.195kmは、差を1分以上広げる圧巻の走りを見せた。

 永山監督は、この素晴らしい結果を受けてこう話した。

「一山には、福士がやっていたマラソン練習よりハードなものに取り組んでもらい、なおかつタイムを狙うという目標があった。それを確実にやってくれたことが、この結果につながったと思う」

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