箱根駅伝で帝京大が「5強」を崩す。
エース不在も復路で力を発揮する

  • 酒井政人●文 text by Sakai Masato
  • photo by Kyodo News

箱根駅伝2020 有力校はココだ!  
戦力分析 帝京大学編

 4度の首位交代に、5区間での区間新記録。前回の箱根駅伝は大いに盛り上がった。その中で、さほど目立たなかったものの、前評判どおりの強さを発揮したチームがある。それが帝京大だ。往路は9位と苦戦しながら、総合5位でフィニッシュ。復路は3位で突っ走った。

前回の箱根駅伝を5位でゴールした帝京大前回の箱根駅伝を5位でゴールした帝京大 今季は出雲駅伝が7位で全日本大学駅伝は8位。いずれも過去2番目タイの順位だった。そして、11月23日の1万m記録挑戦競技会で星岳(3年)、岩佐壱誠(4年)、田村丈哉(4年)、平田幸四郎(4年)、橋本尚斗(2年)の5人が28分台の自己ベストをマーク。エントリー選手上位10人の1万m平均タイムは、昨年より5秒短縮して全体の5位(28分52秒20)につけている。前回王者・東海大のタイム(28分50秒54)と比べても遜色ない。

「エントリー(16人)に1年生が6人入るようなチームもありますけど、箱根は上級生が頑張るものだと思っています。例年は1人、2人欠けるので、1万m平均タイムが下がるんですけど、今回は1~10番目の選手がそのままスポッと入るぐらい順当なメンバー構成になりました。そして1~2年生にも面白い選手がいます」(中野孝行監督)
 
 今回のエントリーは、4年生と3年生が各6人、2年生3人、1年生1人。「本当は21人ぐらい選びたかった」(中野監督)という中から選出された16人だけに、レベルは高い。

 ほかの箱根上位校に比べると、帝京大に入学してくる選手の実績は劣る。逆指名がほとんどない中で、中野監督は「悔しさを知っている選手」を中心にスカウトしてきた。そして、「小さいものの積み重ね、たゆまぬ努力をすることで、上級生になればなるほど力を発揮できる」と、例年、上級生が中心のチーム構成になっている。

 高校時代に全国トップクラスの成績を収めた選手がいないため、エースの育成には苦労してきた。前回の箱根は2区が区間14位、5区が区間16位。今季の出雲は3区と6区が区間ふた桁順位で、全日本も最終8区は区間11位だった。全日本は1区でも18位と出遅れているが、最終的にはシード権(8位以内)を確保している。帝京大はエース区間以外で勝負するチームなのだ。前回の箱根は10区で星が、出雲では5区で小野寺悠(3年)が区間賞を獲得するなど、随所で王者・東海大を凌駕する走りを見せている。

 前回5位のメンバーが7人残っているが、中野監督は区間を限定するタイプではなく、前回から大幅にシャッフルする可能性が高い。2区は主将・岩佐と前回10区で区間賞の星が希望しており、5区は前々回に区間8位で走っている平田が候補か。

1 / 2

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る