立教大が箱根駅伝を目指し改革実行。名選手の指導でチームは変わった (5ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Sato Shun

 レースでは、栗本一輝(4年)と斎藤のふたりはフリーで走らせ、あとは3~4人のグループを3つに分けて臨むつもりだ。

「大きな集団で走ると、選手同士がくたびれてしまう。少人数の集団に分けて、余裕のある選手はうしろのグループに置いて引っ張ってもらい、15キロ以降は全員フリーでいかせます。

 個人的には栗本と斎藤に期待したいですね。とくに栗本は、蒸し暑いなか(日体大記録会の)1万mで明治大の選手と渡り合い、304733で走った。コンディションがよければ、29分台で走れる力はあります。昨年は6540秒の選手が関東学生連合の一員として箱根を走っているんです。64分台で走れば箱根を走る10名に入れるし、65分台だと(エントリーメンバーの)16名に入れる。最低ラインは65分台なので、『(1キロを)3分05秒を切って走りなさい』と言っています」

 昨年よりも確実に練習を積んでいるので、個々が自信を深めてレースに臨めるのは間違いない。斎藤は「昨年(68分32秒)より3分早いですけど、65分台を目指す」と気持ちを駆り立てている。また登録メンバーは1、2年生が多く、伸びしろのある選手ばかりなので、もしかすると驚くようなタイムが出る可能性はある。

「強豪校はプレッシャーがあるけど、僕らは気楽にできるし、挑戦者として戦える。『僕らはできるんだ』というのを予選会で見せたいですね」

 斎藤は笑顔でそう言った。

 もちろん、不安がないわけではない。夏合宿では断続的に800キロほど走ったが、一度に30キロ程度の長い距離を走っていない。そのため「スタミナが足りない」と上野監督は言う。予選会のコースは、昭和記念公園内に入った最後の坂が厳しい。そこでスタミナと粘りが要求されるのだが、立教大の選手たちはどのくらい粘れるのだろうか。

 厳しいレースになるのは間違いないが、今回は上野監督が言っていたようにそれぞれが少しでも昨年のタイムを上回り、全体の力が上がれば「ラッキー」と思えるぐらいの意識でいいと思う。それぞれが「よかった」と思えるタイムと経験を積み重ねていけば、来年はさらに強くなるはずだ。

 あたりが暗くなり、照明が入ったトラックで「みんないい感じになってきている」と上野監督は表情を崩した。予選会に出場する12名の選手は、この練習でほぼ見えてきたという。立教大が箱根に向けて第一歩を踏み出す予選会。上野監督率いる選手たちは、はたしてどんな走りを見せてくれるのだろうか----

  『箱根奪取 東海大・スピード世代 結実のとき』

【発売日】2019年10月4日

【発行】集英社

【定価】1,300円(本体)+税

【内容】2019年1月3日──。 往路2位から復路8区の大逆転劇で みごと箱根駅伝初優勝を飾った東海大学。 その“栄光”にいたる道程にあった苦難や葛藤、 当日のレース模様などを 監督、コーチ、選手たちの証言を交えて 鮮やかに描き出す。

そして、「黄金世代」と呼ばれて輝きを放ってきた 現4年生たちが迎える学生最後のシーズン。彼らはどのような決意で箱根連覇に挑むのか。 出雲・全日本も含む3冠獲得を目指し、東海大学の「黄金世代」が駅伝シーズンに向け、再び走り出す 。

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