立教大が箱根駅伝を目指し改革実行。名選手の指導でチームは変わった (3ページ目)
2、3度伝えてからは、もう言わなくなった。
「僕自身がしつこく言われるのが嫌で......だから、言うのも嫌なんです」
ある1年生は朝練習をやるようになって、見違えて走れるようになり、夏からは主要メンバーに入るようになった。選手が意欲的に練習に取り組むようになったのは、もちろんタイムが上がるなど、結果がついてくるようになったこともあるが、上野監督が選手のやる気をうまく引き出して指導しているのも大きい。
「僕が大事にしているのは、コミュニケーションの取りやすい環境です。そうでないと、たとえば足が痛くなった時、選手は『怒られるかなぁ』と思って、言い出しにくくなる。でも、我慢してやってもいいことはない。自分の経験上、そう感じるので、何でも言える環境を心がけています」
練習の前後、上野監督は選手の誰かと常に話をしている。監督から積極的に声がけをして、チーム内の風通しをよくしているのだ。
また、丁寧な指導だなと思ったのは、上野監督が選手に何のための練習なのか、その意図を毎回きちんと説明していることだ。選手は、言われるまま、何も考えず練習をやっていても強くはならない。その意図を理解し、意欲的に取り組むことで身につくし、成果が上がるものだ。
そうしたなかで、練習でたれても、あるいは個人レースで突っ込んでしまい設定タイムが出せなくても、上野監督は怒らない。だが練習で「ここを大切にしなさい」と言ったことを守らないと怒号が響く。
「いつもは怒ることがないので、声を上げると周囲がビックリするんです。『大切にしなさい』と言っている部分をいい加減にすると、意味のない練習になってしまう。僕が中央大時代に田幸(寛史)監督に怒られたのも、その意図を理解せずに暴走したからで、あとでちゃんとやっていればよかったと反省することが多かった。だから、今の選手にはきちんとその意図を伝え、理解して練習をしてもらうようにしています」
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