東京五輪でメダル獲得へ飛翔。走り高跳び・戸邉直人が本格化した

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Murakami Shogo

今シーズンの調子について語った戸邉直人今シーズンの調子について語った戸邉直人 走り高跳びの戸邉直人(日本航空)は、今シーズン初戦となった2月2日、世界室内ツアーのドイツ・カールスルーエで、それまでの日本記録を13年ぶりに2cm更新する2m35を跳んだ。続く室内大会(~20日)3試合でも、2m33と2m34と安定した成績を残して優勝。結果、世界室内ツアーで総合優勝を果たした。

 帰国後には、競技を知ってもらいたいとメディアの取材を積極的に受けたこともあり、練習に集中できたのは3月上旬のシンガポール合宿だけだったという。ただ、そんな状況も戸邉はプラスに捉えている。

「日本記録を跳べたのが今回のタイミングでよかったなと思います。注目のされ方もいろいろ変わったけど、これがもし2020年の2月だったら、東京五輪までにこの状況に対応できなかったと思うので。ここからまたリズムを作って東京に向けてやっていけると思います」

 戸邉が最初に注目されたのは、筑波大1年で出場した2010年世界ジュニアで3位になった時だった。身長194cmとそれまでの日本の走り高跳びにはいなかった長身選手で、日本人が通用しない種目だった男子走り高跳びで、やっと世界と戦える逸材が出てきたと期待された。そこから一気に活躍とはいかなかったが、やるべきことを模索しながら戸邉は競技と向き合った。

「どうやれば高く跳べるかという技術論は日本にもありましたが、それを実際にやるためには、どんなトレーニングをすればいいのかというとろこまでは正直、わかっていなかった。それを明らかにしなければいけないと思ったのが、自分で走り高跳びの研究をしようと思ったきっかけでした。

 日本では僕のように身長が高い選手はあまりいないので、技術的にも僕に合ったものが見当たらないというのが正直なところで、研究するだけではダメだと思ってヨーロッパのトップ選手と一緒に練習して、一度パワーで跳ぶ技術を学んで、それを自分なりにアレンジしなければと思いました」

 戸邉は2010年大学1年の冬、1週間ほどアテネ五輪優勝のステファン・ホルム(スウェーデン)の父親で、コーチでもあるジョニー・ホルム氏の指導をスウェーデンで受けた。その経験もあって、大学2年を終える頃にヨーロッパ式トレーニングへの転換を決め、大学3年の冬には、1カ月ほどホルム氏のもとでトレーニングをして、ヨーロッパの試合にも出場した。

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