箱根に向けて東海大に朗報。人生初の試練を乗り越え、阪口竜平が復帰 (2ページ目)

  • 佐藤俊●文・写真 text&photo by Sato Shun

「陸上を始めて、こんなに長く走れないのは初めてでした。もう、すごいストレスが溜まりました。競技場で補強トレーニングをしているとみんなはポイント練習をしているんですけど、それを見るのが辛かった。出雲駅伝は、見たのは最初だけ。全日本は治療で実家から戻ってくる途中でほとんど見ていません。ケガした自分が悪いんですけど、やっぱり悔しくて、見るのがつらかったので......」

 左足を使えない状況で阪口は、リハビリと練習に集中した。

 補強トレーニングを終えた後、プールで1時間ほど泳ぎ、さらにワットバイクをこいだ。自分を追い込んで練習していたのは走れないストレスを発散させる意味もあったが、両角速(もろずみ・はやし)監督に「上尾と箱根を絶対に走れるというイメージを持って練習に取り組みなさい」と言われたからでもある。その言葉が阪口の大きな励みになっていたという。

「両角先生からは『とにかく練習量を落とさず、たくさんやりなさい』とアドバイスをいただきました。もうめちゃ練習しましたね。水泳も左足首が使えないんで、ビート板を股に挟んで1時間ぐらい泳いでいました。そうしたら上半身がムキムキになって治療の先生にも『ごつくなり過ぎだなぁ』と言われて(苦笑)。今はもう解消されましたけど、そのくらい集中して練習をやっていました」

 10月末にはポイント練習をこなせるようになり、上尾ハーフを復帰戦として調整してきた。しかし、上尾に間に合わせようとかなりハードに練習してきたせいか、体が思うように動かなくなり、レース前日までの4日間はほとんど走れずにいた。そのため、阪口はレース当日、本当に走れるのかどうか大きな不安を抱えていた。

「レース前までは練習前の集合に出ていただけで本当に走れなかったんです。前日は、さすがに走らないとレースは無理やろって思って走ったんですけど、結局1.5キロぐらいで走れなくなって......。レースに出るまで恐くて、本番はもう気合いで走りました」

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