ベテラン駅伝記者が「箱根の区間エントリー」から読む有力大学の戦略 (4ページ目)

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Yohei Osada/AFLO SPORT

 復路の7、8、9区は当日変更の可能性が高いが、10区に鈴木祐希(4年)を置いたのは神奈川大のポイントのひとつ。堅実に走る復路勢の中で、唯一1万m28分台の記録を持つ選手だ。彼をもう少し前の区間に置いて順位を確実にキープする作戦も取れるが、あえて10区に置くのは最後の競り合いで勝てる選手という期待もあるからだ。大後監督は、優勝争いは最後まで混戦になると見て、「隙あらば」と狙っているようだ。

 前回2位の東洋大は、全日本の1区で区間賞を獲得した相澤晃(2年)を、予想されていた1区ではなく、2区にエントリーしてきた。1区は出雲駅伝1区区間5位の西山和弥(1年)だが、彼は日本インカレ1万mで日本人トップの3位になったように、勝負強さが持ち味。1区でも確実に上位できてくれると予想したのだろう。

 さらに、相澤の2区起用は今後の成長とエースとしての自立も期待してのことのはず。5000m、1万m、ハーフマラソンともにチーム最速という実績を尊重し、来季への成長をさらに促そうとする区間配置だ。

 その2区までがうまく機能すれば、3区は全日本5区5位で、5000mはエントリー選手中4番目の記録を持つ中村駆(かける/2年)でしのぎ、4区は全日本の8区を着実に走った吉川洋次(1年)の安定性で流れに乗る。5区は前回2区の山本修二(3年)への変更が濃厚とも言われているが、そうなった場合は酒井俊幸監督が往路優勝までを視野に入れているということだろう。

 1万m学生歴代4位の27分47秒87を持つエース・塩尻和也(3年)を擁する順天堂大は、他校の往路の様子を見るエントリーをしてきた。前回4区区間賞の栃木渡(3年)を補欠に回し、彼が入ると思われた4区に全日本で8区を走った難波皓平(2年)をエントリーしていることを考えれば、栃木は当日変更で往路の3区か1区ということになるだろう。

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