フィジカルをハードに改造中。神野大地の走りは「山の神」時代と違う (4ページ目)

  • 佐藤 俊●文 text by Sato Shun
  • photo by AFLO


 中野にとってみれば、神野の走りは想定内ということだったらしい。ただ、動画で見た練習の走りがよかっただけに、もうちょっと走れたのではないかという思いもあった。

「まぁ、いろいろあったしな」

 中野が苦笑した。

 神野は日本選手権の2日前に新幹線で移動し、午後7時過ぎにはホテルに到着する予定だった。しかし、豪雨のために1時間半遅れ、さらに送電線が断線して合計で6時間も車内に閉じ込められたという。

「結局、ホテルに到着したのが夜中の2時過ぎでした。車内販売が全部売り切れで水分も取れないし、夕食も食べられなくて......。3人掛けの椅子で、残りの2席に誰もいなかったので横になって寝ていました。試合当日はだるさとか、眠気とかがなかったのでレースには特に影響しなかったんですけどね」

 神野は、そう言って苦笑した。

 中野の「動きが悪かった」説明を聞き、神野は腑に落ちたという。

「増えた筋肉を"走り"にまだちゃんと使えていない。結局、トレーニングに比べて、走りが遅れているのが原因だとわかりました。もうひとつ、日本選手権ではいつもよりも早く呼吸が苦しくなったんです。それは増えた筋肉に対して、酸素の供給がうまくできていないからで、中野さんからは『レイヤーをしながら、走りのトレーニングも落とさずにやっていけば徐々に改善されていく』と言われました。どちらも走りのトレーニングを継続していくことで解消されるので、これからはケガをしないようにやるだけですね」
 
 日本選手権で現状の課題が見えたわけだが、その後、神野は走りの手応えを改めて感じることができたという。金曜日に日本選手権で1万mを走り終えた後、翌月曜日はジョグ、火曜日は朝練習をしてレイヤートレーニングを終え、水曜日は30km走をこなした。その時、キツいなと思ってもリズムを変えずに30kmを走ることができたという。

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