フィジカルをハードに改造中。神野大地の走りは「山の神」時代と違う (6ページ目)

  • 佐藤 俊●文 text by Sato Shun
  • photo by AFLO


 7月13日、網走は気温36度、湿度62%という信じられない暑さに見舞われていた。陸上競技場近くのコンビニは水やアイスを求める人で混雑し、涼しい北海道でタイムを狙うために来た選手は、まさかの暑さに戸惑いを隠せない。

 神野は1万mB組で、17時15分のスタートだった。夕方で暑さは和らいだが、それでも気温は29度と高く、湿度は71%もある。やはりタイムを狙う選手にとっては厳しい戦いになるだろう。
 
 そんななか、レースが始まった。神野は中盤あたりで冷静に様子を見ている。このレースには青学時代の同期の小椋裕介(ヤクルト)、後輩の一色恭志(GMO アスリーツ)や下田裕太(青学大4年)も参加しており、OBと現役が競う合う展開にもなった。

 最初の400mはムソニ・ムイル(創価大)ら外国人勢が引っ張って走り、65秒台だったが、その後は68秒前後で推移していった。5000mでのトップ通過は14分21秒。神野は先頭集団の後方にポジションを取り、8000mでは12番手だった。ラスト2000mの勝負になったが、神野はここから落ちなかった。
 
 ラスト1周の鐘が鳴り、神野が懸命に走る。地面を蹴って走る姿は力強く、青学時代の軽さを活かした走りではない。最後まで必死に粘って9位、28分56秒34。目標タイムとほぼ同じだ。

「プラン通り、やっと走りが追いついてきた感があります」
 
 神野は汗に濡れた顔に笑みを浮かべた。

「途中、お腹の差し込みがあって、それがなければもっと高いレベルで粘れたのかなって思います。それでもいいレースができましたし、トレーニングに走りがちょっとずつ繋がってきているなと感じました。足に成果が出ています(笑)」

 そう言って少しホッとした表情を見せた。この結果にコニカミノルタの磯松大輔監督も満足そうだった。

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