「ケニア人と勝負できる」。監督も太鼓判、井上大仁が世界陸上マラソンに挑む。

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Kyodo News

 2005年の世界陸上ヘルシンキ大会で、中国電力の尾方剛(現・広島経大陸上競技部監督)が銅メダルを獲得してから12年。久々の表彰台を目指して、ロンドンで開催中である世界陸上の男子マラソンに、中本健太郎(安川電機)と川内優輝(埼玉県庁)、井上大仁(ひろと/MHPS:三菱日立パワーシステムズ)の3選手が出場する。

2月の東京マラソンで、日本人トップでゴールした井上2月の東京マラソンで、日本人トップでゴールした井上 出場権をかけた代表選考レースでのトップタイムは、今年2月の東京マラソンで井上が記録した2時間08分22秒。現在の男子マラソン界はケニア人ランナーを中心に高速化が進んでいるため、タイムだけを見れば物足りないが、MHPSマラソン部の黒木純監督は「少なくとも、30kmくらいまでは見る側を熱くさせるようなレースができるはず」と、井上に期待を寄せる。

「世界陸上なら、2時間8分、9分台でいけるような準備ができれば、ケニアの選手とも十分に勝負できます。井上には、東京マラソンの前にも『世界と戦うには1km3分ペースではダメ。失敗してもいいから突っ込んでいこう』と話して、その通りのレースをしてくれました。10kmまで突っ込んでから耐えることができたことで、いいイメージが作れたんじゃないかと思います」

 10km以降はペースを落としたものの、38km地点で設楽悠太(Honda)をかわし、日本人トップでゴールした。井上本人は、レース後に「設楽さんを離してから足が動かなくなってしまった」と反省したが、日本男子マラソン界の新星誕生に世間は大いに沸いた。しかし、黒木監督はそんな井上を「東京五輪でメダルを狙える」と入社当初から高く評価していた。

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