山の神・柏原竜二が語る引退の真相。
「駅伝に逃げてはいけないと...」 (5ページ目)
波乱の競技人生を振り返る柏原 photo by Murakami Syogo「期待されるのが苦しいのをわかってくれる人ばかりではないですからね。先日、末續慎吾さんが『今の選手は9秒台をメチャクチャ意識している』とテレビで話していたんですが、それはリオ五輪のリレーで銀メダルを取り、周囲の期待が大きくなったから。記者は『9秒台を出す』という言葉を誘導するし、選手たちも『記録を出したい』『陸上界を盛り上げたい』という想いがあるからだと。
末續さん自身もそういう時があったと打ち明けていましたが、それを聞いて『自分もそれに近かったな』と思いました。世間が期待しているから、自分を奮い立たせる意味でも『何か言わなければいけない』という感じがあって。でも、大迫傑くんなんかは、それを言わないですよね。あの彼のメンタリティーというか、態度を見て、『僕もこうするべきだったのかもしれない』と、今になって思います」
期待を過度に背負い、アキレス腱の痛みを引きずった3年目は低迷し、自分でも「情けない」という気持ちになっていた。2015年の5月に地元・福島で開催された東日本実業団の5000mも24位に終わったが、一方で、結果を出さなくても応援してくれる人がいることを知った。
「ゲストランナーとして参加した10月の猪苗代湖ハーフマラソンでも、純粋に頑張ってほしいと思ってくれている人や、『君が走っている姿を見たい』と言ってくれる人が少なからずいました。そういう景色は、ケガをしていなかったら見られなかったと思います。単純に自分の走りを好きでいてくれる人たちの存在を感じられたことで、自分の結果がどうであれ、きちんと走ることが重要だと思えるようになりました」
5 / 7