【月報・青学陸上部】エース一色恭志の激走がチームに喝を入れた (4ページ目)

  • 佐藤 俊●取材・文 text by Sato Shun photo by AFLO

 一色は1000mから2000mは4、5番手につき、落ち着いた走りで先頭集団にいた。ちょうど優勝候補の大迫の後をついていく感じだ。表情を見てみると余裕があり、走りには自信と力強さがみなぎっている。

 3000mあたりでは9番手に落ちるものの、先頭から一列になった集団の中に一色はいた。そして、4000mを越えた瞬間、大迫がサッと前に出た。残り1000mで仕掛けたのだ。

「大迫さんがバンと前に出て行くので、まさかって思いましたね。(残り)1000mから仕掛けるなんて考えたことはもちろん、頭によぎったこともなかったです。でも、大迫さんの後ろを走れるなら撃沈してもいいやって感じで、ついていったんです」

 最初はついていけた。しかし、ラスト1周の鐘が鳴ると大迫はさらに加速し、一色との差を広げた。地力にまさる上野裕一郎と大六野秀畆(だいろくの しゅうほ)にも抜かれた。それでも歯を食いしばって食い下がる。ホームストレートに入ると、前を走る上野と大六野が視野に入った。3人の走りにスタンドがドッと沸く。

 高校の時はラスト100mでまくるレ-スで勝ち続けたが、大学に入ってからはそういう走りができなくなっていた。だが、関東インカレの5000mで勝って自分のレ-スの持ち味を思い出し、ラストの切れ味が戻ってきた。その自信を持って最後の力を振り絞った。

 4位、13分39秒65、自己ベスト更新だ。

「ラストスパートした大迫さんに意外とついていけたんですけど、ラスト1周はスピ-ドが全然違いました。勝てる気がまったくしなかったです(苦笑)。でも、ラストに冒険してガンと前に出る走りができた。しかも自己ベストが出てよかった」

4 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る