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【月報・青学陸上部】エース一色恭志の
激走がチームに喝を入れた (3ページ目)

  • 佐藤 俊●取材・文 text by Sato Shun photo by AFLO

 10000mの負け方は普通ならショックが残りそうだが、その反省をすぐに生かして5000mのレ-スに反映させた。しかも、力をためてラストスパートでスピードアップし、フィニッシュ直前で差し抜いたのだ。レ-ス運びに冷静さと力強さが垣間見えた。

 それができたのは、なぜなのか。

「レ-スを楽しむ余裕が出てきたのが大きいです。マラソンを一度経験して、スタミナも含めて精神的な部分で成長できたなと感じたんです。実際、部内できつい練習をしていると、みんなはヒーヒー言うんですけど、僕はまったく問題ないんですよ。マラソンを走って気持ちも体力的にも上限が上がったというか、器が大きくなった感じです。

 陸上界では学生のうちにマラソンを走ると、トラック競技に悪影響が出ると言われている。だが一色はあえて、その根拠のない都市伝説に挑んだ。マラソンを走った後はさすがにダメ-ジが大きく、2週間ほど走らずに休養した。練習再開後も疲労が残り、走りにくさを感じていたが、4月の世田谷記録会で14分10秒を出してやれる感覚をつかんだ。それ以降は順調にタイムを上げ、スタミナにも自信を持てるようになった。

「東京マラソンから、この日本選手権は本当にいい流れの中で迎えることができました。僕よりも速い選手ばかりなので、失うものは何もない。トップの選手についていけるところまでついていって、それで結果が出れば儲けもんというぐらいの感覚で走ります」

 第100回を迎える今年の日本選手権はリオ五輪の選考大会でもあり、日本の陸上のトップが集う最も大きな大会だ。5000mのエントリーシートには、日本記録(13分08秒40)を持つ大迫、さらに鎧坂(よろいざか)哲哉、設楽悠太、同じ学生でライバル視する服部弾馬ら日本長距離界の錚々たるメンバ-が名を列ねていた。一色のタイムは参加24名中23番目だったが、タイムがすべてではない。この大会は"勝負"が重視されるのだ。

 6月26日17時05分、レ-スが始まった。

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