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【箱根駅伝】ポスト柏原も断トツの層の厚さ。東洋大連覇に死角は? (4ページ目)

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Wataru Ninomiya/PHOTO KISIMOTO

 酒井監督のそんな思いは選手たちにも伝わっている。それが東洋大の強さにもなっているのだろう。

 層の厚みと力では抜きん出ている東洋大だが、もし綻(ほころ)びが生じるとすれば、そんな攻めの気持ちが力みにつながってしまうことだ。前回の往路は柏原という絶対的なエースがいたために他の選手はノビノビと走れた部分がある。復路も5分以上のアドバンテージを持ってのスタートで各選手たちは余裕を持てていた。柏原効果は彼が生んだ実際のタイム差だけではなく、他のメンバーに与えた精神的な余裕も計算に入れなくてはいけない。駒大の大八木弘明監督はそれを「1人30秒だと思う」とも言う。

 逆に優勝を狙う他チームの選手にすれば、往路の4区までは「柏原がいるから少しでも東洋大を離さなければいけない」という焦りもあったはずだ。今回はそのプラスとマイナスが無くなることになる。

 そんな雰囲気が少しかいま見えたのは、11月の全日本だった。最終区の8区に1年生の服部を起用した東洋大は、駒大に2分差をつけてつなぐことを目標にしていた。6区の市川は10㎞を1万mの自己ベストより10秒速い28分44秒で通過して、その差を一時は1分20秒以上に広げて逃げ切りを確実にしたかと思えたが、ラスト2㎞で失速して55秒差にまで戻されていた。続く7区も12秒しか広げられず、結局、駒大の窪田忍に逆転を許したのだ。

 酒井監督は、「市川だけではなく、他の区間も最後のひと伸びが足りなかった」と反省していたが、それが目に見えないプレッシャーというものだろう。脱・柏原を意識する選手たちがそんなプレッシャーとどう戦うか。それもまた東洋大連覇への大きなカギになるはずだ。


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