日本のエース香西宏昭がドイツで進化。苦境を乗り越え東京パラに挑む

  • 斎藤寿子●取材・文・写真
  • text&photo by Saito Hisako

 5月18日、ドイツ・ブンデスリーガのプレーオフ・ファイナル第2戦が行なわれ、香西宏昭が所属する車いすバスケットチーム、RSVランディルは、RSBテューリンギア・ブルズに70-73で初戦に続いて敗れた。ランディルは2年連続で準優勝に終わった。

 香西はすでに来シーズン、東京パラリンピックに向けて国内で活動することを表明している。2020年以降のことは白紙状態の中、ひとまず東京で現役生活の一区切りをつけたいと考えている香西にとって、これがドイツでの最後の試合となった。これまでにない苦しみを味わいながらも成長してきた香西。ドイツでのラストシーズンを振り返る。

チームは敗れてしまったが、役割をきっちりと果たした香西宏昭チームは敗れてしまったが、役割をきっちりと果たした香西宏昭 彼が叩き出した得点は、両チーム最多の23得点。

 フィールドゴール成功率は、66%(15本中10本)。そのうち2Pに限っては77%(9本中7本)。50%の高確率で決めた3Pは、チーム総数4本のうち3本が香西が決めたシュートだった――。

 最後の試合となったプレーオフ・ファイナル第2戦のスタッツは、香西が導き出した今シーズン、そしてドイツリーグで過ごした6シーズンの"成長"が示されていた。

 ランディルに移籍して1年目の昨シーズン、香西はチームに合流した初戦からスタメンに抜擢され、最終戦までそのポジションを守り続けた。その結果、ドイツカップでは自身初のタイトルを獲得。リーグや欧州クラブ選手権でも初めてファイナルラウンドを経験し、過去最高の成績を手にした。

 しかし、ヘッドコーチが代わった2年目の今シーズンは一転、一度もスタメン出場することはなかった。与えられるプレータイムは短く、シーズン序盤は「自分はチームに必要な戦力なのだろうか......」と疑問を抱くことも少なくなかった。そして2020年に迎える"本番"が刻一刻と迫る中、一日も無駄にすることはできないという思いが香西の中で募っていた。

 それでも当時の香西は腐ることなく、気持ちを強く保ちながら"その時"が訪れるのを、じっと耐えて待っているように感じられた。

 シーズンが進むにつれて、徐々に大事な局面で投入されることも増えていったが、起用のされ方には波があった。チームが劣勢な時に流れを変える"シックスマン"としての重要な役割を与えられる試合もあれば、スタメン以外で組んで苦しい状況に陥ってもなかなか声がかからないこともあった。

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