パラアイスホッケー代表監督が、17年間選手に伝え続けたアスリートの魂
世界トップの8カ国が参加するパラアイスホッケーの世界選手権(Aプール/チェコ・オストラバ)が4日、閉幕した。決勝ではアメリカがカナダを延長戦の末、3-2で破り、2大会ぶりの優勝を果たした。日本代表は予選リーグで全敗し、順位決定戦でもスウェーデンに敗れて最下位の8位。3度目となるBプール降格が決まった。
今大会最後の指揮を執った中北監督の指示に耳を傾ける選手たち 日本代表は今シーズン、4度の海外遠征を実施したが、最終的にチームのメンバーが固まったのは今年に入ってから。この世界選手権でできることは、新たな戦術に取り組むのではなく、とにかくきっちりと守り、少ないチャンスで決めることだった。
だが大会をとおして、マンツーマンでの守備が乱れて相手をフリーにさせる場面が目についた。登録選手がわずか10人と最小人数で戦うスウェーデンに対しても、ほとんどの時間でパックを保持しながらミスを繰り返し、逆に一瞬のチャンスを相手に与えて失点を許した。全4試合を終えて、トータル71本のシュートを放ちながら5得点に留まった。成功率「7.04%」は8カ国中、断トツの最下位だ。得点力も守備力も他国とは大きな開きがある。
98年長野パラリンピックから代表で活躍する吉川守(長野サンダーバーズ)は、「このチームはまだ仲間を信じ切れていない」と話し、また新チームづくりに尽力してきたキャプテンの児玉直(東京アイスバーンズ)も「勝とうという意思は持っていたけれど、自分たちの作戦を見失ってしまった」と、危機感をにじませた。
世界で戦うための技術もメンタリティも足りなかった。それが正直なところだ。それでも、吉川や三澤英司(北海道ベアーズ)、須藤悟(同)らベテラン勢がチームを鼓舞し、熊谷昌治(長野サンダーバーズ)はこの半年間、自らフォワードからディフェンスへのコンバートを希望し、守備力向上に心魂を傾けるなど、若手選手をその背中で引っ張ってきた。
育成選手の新津和良(長野サンダーバーズ)、濱本雅也(ロスパーダ関西)、坂本義仁(同)らも、必死に先輩に食らいついた。今大会、セカンドGKの保城厚弥(東京アイスバーンズ)は出場機会がなかったが、プレーヤー3人は"世界"を肌で体感した。濱本は「僕らが経験した悔しさは今回参加できなかった育成組に絶対に伝えなければいけないし、僕らが下から押し上げていくという気持ちを忘れないようにしたい」と前を向いた。
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