田中愛美の課題はグラグラの精神面。強気の先に東京パラが繋がっている (2ページ目)

  • 神 仁司●文・写真 text&photo by Ko Hitoshi

「これらの取りこぼしがなかったら、7位ぐらいにはなっていたかもしれない」と語る岩野コーチだが、『7位』という数字には意味がある。

 テニス4大メジャーであるグランドスラムは、8ドローで開催されるが、オーストラリアオープン以外は、開催国の選手にワイルドカード(大会推薦枠)が与えられるため、7位以内に入っていないと、ストレートインできないことが多い。

 だからこそ、当面の目標として7位を挙げ、今後のグランドスラムでさらに結果が出せれば、さらにランキングを上げられるはずだと考えている。

「常に上を見て戦っていきたい」という岩野コーチが課題に挙げるのは、田中のメンタルだ。世界のトップ10選手に、勝てそうで勝てなかった試合は、メンタルに起因している。田中は、「メンタルがグラグラ(苦笑)。守りたくなっちゃう。どうしてもリスクを背負いたくない病」と自己分析する。

 もともと田中のテニス特性は、つなぐテニスではないため、守りに入ってしまうとリスクが増すと岩野コーチは危惧する。

「もともとトップスピン(縦の順回転)をかけるのが苦手でフラット系がメイン。勝負どころで入るようになったら(田中は)トップ5に勝てる。厚い当たりで、回転の少ないボールを力の効率よく打てれば、けがもしにくい。多少荒っぽいテニスにはなりますが、やられるよりも(攻撃的に)やれる回数を増やせば勝てる」

 あくまで田中の特性は、変える必要はない。それが日本の車いす女子テニスの第一人者の上地結衣(エイベックス/2位)に近づく道程でもある。

 2018年に田中は、上地と2度対戦して、共に0-6、0-6で敗れ、改めて立ちはだかる大きな壁として認識した。

「どこに打てばいいか、わからなくなるんですよね(苦笑)。神戸での決勝では、首を寝違えていたので痛いし、もうボロボロのなかで唯一効いたのが、リターンのドロップ。去年の(準優勝だった全日本)マスターズ(決勝)の方が、上地選手の調子もありますが、まだできていました」

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