パラ陸上のレジェンドが語る。競技用車いす「レーサー」30年の変遷 (3ページ目)

  • 荒木美晴●取材・文 text by Araki Miharu

 そして、92年ごろに登場した軽くて丈夫なカーボン製が、現在のレーサーのベースになっているという。車体重量は8~10kg程度。フレーム全長は1800mm前後で、ホイールは空気抵抗の軽減を実現するカーボンディスクに。脚は正座のようにして完全に折りたたんで座り、ハンドリムも上から叩くようにして力を車輪に伝えるスタイルへと変わった(自力で上半身を起こすことが難しいといった障がいが重い選手は、正座ではなく重心を後ろにした着座姿勢を取ることもある)。

長い月日をかけ改良を重ね、レーサーは現在の形になった/photo by AFLO SPORT長い月日をかけ改良を重ね、レーサーは現在の形になった/photo by AFLO SPORT トラックの平坦部などでは時速30km前後にも達し、マラソンの下り坂では70km近いスピードが出ることもある。高いフレーム剛性は安定した推進力を生み、高速走行も可能なこのレーサーは、「まるでレーシングカーのよう」と形容される。上半身を鍛え上げ、腕の力だけでこれを動かす選手のすごさがわかる。

 マシン性能の進化、選手の身体能力および技術の向上に伴い、記録も伸びる。たとえば、男子T54のパラリンピック100mの記録の変遷をたどると、2000年シドニー大会の予選・決勝を通した最速タイムは14秒36。8年後の北京大会では、予選でレオ=ペッカ選手(フィンランド)が13秒76をマークし、ついに「13秒台」の世界に突入した。また、彼はロンドン大会で13秒63という世界記録を樹立しており、年々、競技性が増していることがわかる。

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