パラ陸上のレジェンドが語る。競技用車いす「レーサー」30年の変遷

  • 荒木美晴●取材・文 text by Araki Miharu

 先ごろ引退を発表した、パラ陸上の車いす短距離界の第一人者である永尾嘉章さん。「レーサー」と呼ばれる競技用車いすの歴史(主に永尾さんのT54クラスについて)、アスリートを取り巻く環境の変化などについて、約30年にわたって競技人生を歩んできた永尾さんならではの話を聞いた。

1986年「第6回大分国際車いすマラソン大会」に出場したときは普通の車いすに近い4輪だった/永尾さん提供1986年「第6回大分国際車いすマラソン大会」に出場したときは普通の車いすに近い4輪だった/永尾さん提供 まず、レーサーについて。現在の競技用車いすのレーサーは、日常で使う車いすとは異なる形状をしている。IPC Athletics(国際パラリンピック委員会陸上競技部門)競技規則には、「車いすは最低でも2つの大きな車輪と1つの小さな車輪で構成され、小さな車輪は車いすの前方になければならない」「後輪、前輪の直径は十分に空気を入れたタイヤを含んで、それぞれ70cm、50cmを超えてはならない」などと定められている。

 現在のレーサーは3輪だが、永尾さんが陸上を始めた35年ほど前は、生活用の車いすのタイヤにハンドリム(漕ぎ手の部分)をつけたもので、まだ4輪だった。素材は主にチタン製で、ホイールはスポークホイール。脚を前に出すような形で座っていた。

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