競輪・松井宏佑が語るレース前の祈りと「僧侶になりたい」の真意 過酷な4部練、先輩から叱責されたレースも明かす (4ページ目)
転向後は競輪に全身全霊を注ぐ photo by Hiroshi Gunki この記事に関連する写真を見る
【激しく叱責されたレース】
今年デビューから9年目となる松井には、忘れられないレースがある。それは2020年のGⅠでのことだった。その時は先輩選手とラインを組んで戦っていた。
「自分は先行すると言ったんですが、それをしないで一旦後ろに引いて、自分だけまくり追い込みで3着に入ったんです。ただラインのほかの選手は全員3着までに入れませんでした。普段はすごく優しい先輩なんですが、その時はめちゃくちゃ怒られました。勝ちにこだわるのもいいんですが、『ラインを導いてこその競輪だ』ということを改めて痛感しました」
練習仲間や同じ県、同じ地区などとチームを組む"ライン"。競輪ではレースの終盤までライン同士による壮絶な戦いが繰り広げられ、最後は個人対個人の戦いとなる。ラインには並ぶ位置によって役割があり、互いにサポートし合うことで、自らもそして仲間たちも勝利に近づける。
松井はこのレースでその役割をこなさず、自分勝手に走ったことで、先輩選手に激しく叱責された。翌日の準決勝は「もぬけの殻、心ここにあらずの状態で、ボーッとしながら走っていた」というとおり8着に沈み、決勝には進めなかった。
これを機に松井は徹底的にラインでの走り方を考え直し、練習や実際のレースのなかで試行錯誤を繰り返した。そうして少しずつ周りの選手からの信頼を取り戻し、2023年の競輪祭では「これだ」と思える確かな手ごたえをつかむことができた。
「深谷(知広/静岡・96期)さんのおかげもあって決勝で2着でしたが、そこまでの勝ち上がりもよかったですし、『競輪』ができているなという感覚がありました」
レースを繰り返すうちに競輪の奥深さを知った松井は、その魅力についてこう語る。
「前と後ろの選手の絶妙なチームワークの動きは面白いですね。先行の選手が頑張って後ろの選手が他のラインを邪魔するみたいな、その息の合ったプレーを見るとすごいと思います。順位のところではなくて、その着になるまでのプロセスのところを、ぜひ見てもらいたいです」
続けて「みんな熱い気持ちを持って走っています」と言葉に力を込めた。
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