五輪6大会連続出場のノルディック複合・渡部暁斗が奇跡を信じられる理由「満開の桜の咲かせて終わりたい」 (2ページ目)
【奇跡を信じられる理由】
「もうひと花咲かしたい」とはいえ、全盛期を過ぎたアスリートが最高のパフォーマンスを最後のシーズンに発揮することが、いかに難しいかも渡部は承知している。無謀だからこそ、挑戦する価値があるのではないか。そう思える理由が、2022年北京五輪でメダルを獲得できた経験だ。
五輪前のシーズンは、W杯で優勝1回を含めて7回表彰台に乗り、総合も3位と絶好調だった。しかし、五輪シーズンのスタートは二桁順位。年明けからは、一桁順位を出せるようになったものの、最高5位と表彰台は遠かった。さらに五輪直前には17位、25位と調子を落としていたのだ。
「あれ(北京五輪の銅メダル)も、今思えばかなり奇跡的な出来事だったと思います。あの経験があったからこそ、今は奇跡が起きると信じられる。あれがなければやっぱり、結果は実力がないと勝ち取れないものだと考えてしまったと思う。あの経験があったからこそ、今シーズンも根拠のない自信を持って突き進める感じです」
それとともに、自分だけではない周りの力も感じた瞬間だったという。
「北京五輪の団体戦が一番それを感じられた瞬間というか、1日だったと思います。応援してくれる人たちだけではなく、チームのスタッフの働きや一緒に出場した選手たちの頑張りとか、そういうものに自分も背中を押された『最後のひとつ』があったと思えた瞬間でした」
その経験があったからこそ、シーズン終了後ではなく始まる前に引退を発表したと言う。
「最後のシーズンは『自分が流した汗で奇跡を起こす』ぐらいの気持ちで臨みたいですが、自分の努力だけでは奇跡を起こすことはできないと思っています。奇跡を信じ、期待してくれるみなさんの力が最後のひと押しになると思っています。
だから、自分もただ『応援してください』と言うだけではなく、応援したくなるような選手であり続けること。そして思わず応援したくなるようなレースを続けること。そんな気持ちを持って最後のシーズンに臨みたい。簡単な道のりではないのは十分承知の上で、奇跡を起こす瞬間を信じて最後の最後まで戦いたいと思っています」
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