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「自分をよく思わない人もいる」「自分は競輪界のヒール」と阿部拓真 笑顔の裏にある不屈の闘志と努力の日々を語る (4ページ目)

  • text by Sportiva

何度も「がむしゃら」「全力」という言葉を口にした阿部 photo by Gunki Hiroshi何度も「がむしゃら」「全力」という言葉を口にした阿部 photo by Gunki Hiroshiこの記事に関連する写真を見る

【何事にも全力】

 競輪選手になってからも決して華々しい活躍を見せてきたわけではない。タイトルを獲った競輪祭は8回目のGⅠ出場で、これまでは「GⅠに毎回出られるような選手になる」ことを目標に置いていた。ただそのための努力は惜しまなかった。

「『何事も全力』を心掛けていますし、そういう性格ですかね。やるからには全力でやりたいなという気持ちです。高校時代から1日1日を後悔したくないなと思っていました。今日これ以上何もできないくらいがんばったのだろうか、何百キロ乗ったとしても、あと10キロ乗れたんじゃないか、練習での1本1本を手を抜かずにしっかりと100%出しきれたのかと常に自問自答してきました」

 そんなひたむきな姿勢は、「自分は弱い」という思いがベースになっている。

「S級になってからはとくに、やっぱりみんな強いなと思っていて、自分のできることを全部出さないと勝てないです。今考えて見ても自画自賛するようなレースは思い浮かびません。負けたらその人より努力をしていないと思うしかないので、努力するしかないと思っています」

 この努力する意欲に加えて、積極果敢な走りも彼の持ち味だ。「レースを怖がらず、物怖じしないで向かっていく」ことを信条としているが、その姿勢が影響しているのか、2025年の1年間で落車した回数は6回。過去には1年で7回の落車を経験したこともある。

「今年に限らず、ずっと転び続けてきた11年間でした。幸いなことに転んでも次に向けてやっていこうという気持ちになれている。このまま終わりたくない、ここで心が折れている場合じゃない。単純に悔しいという思いが自分の原動力です。心を折らさずに一つひとつコツコツと練習を積み重ねてきたことがタイトル獲得につながったのかなと思います」

 そしてたとえ周りの落車に巻き込まれたとしても、「人のせいにはせず、その位置にいた自分が悪かったりするので、とくに悲観せず前向きに捉えています」と、そこから得られるものを模索するなど、強靭と言える精神も持っている。

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