「自分をよく思わない人もいる」「自分は競輪界のヒール」と阿部拓真　笑顔の裏にある不屈の闘志と努力の日々を語る (3ページ目)

過去の自分を振り返る阿部　photo by Gunki Hiroshiこの記事に関連する写真を見る　それでも阿部はめげなかった。法政大学に進学して自転車競技を続けた。ここでも「ただ真面目にがむしゃらに自転車に取り組んでいた」。しかし結果はなかなか出なかった。「無名中の無名選手で何の成績も残せなかった」という。

　そうしてもがき苦しんでいたなかで就職活動の時期になった。自分はどうするべきなのか――。自問自答するなかでひとつの答えが出た。

「大学３年の終わり、就活の時期になった時に、自分が社会人として仕事をするイメージが湧かなくて、やりたいことが競輪以外にないなと思いました。競輪選手一本でいこうと覚悟を決めてからは就活を辞めて、練習に打ち込みました」

　自分の生きる道を定めたこともあり、大学４年になってようやく結果がついてきた。全日本大学対抗自転車競技大会ではケイリンとチームスプリントで２位となり、全国都道府県対抗自転車競技大会ではケイリンで１位と初めて全国の頂点に立った。

「４年で結果を出せたのは、ロードでインカレを優勝した先輩とふたりで毎日何百キロと走ったりして基礎を固めていた、それまでの積み重ねのおかげです。できることをがむしゃらにはやっていました」

　目に見える結果を出し始めた大学４年の時に、競輪学校（現日本競輪選手養成所）の試験に合格。翌年の１年間をそこでしっかりと学び、在校成績４位で卒業。晴れて競輪選手の道を歩み始めた。