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「行けー! 行けー!」「もう奇跡とは言わせない!」 豊原謙二郎が語るラグビーW杯での名実況はこうして生まれた (4ページ目)

  • 一ノ瀬伸●取材・文 text by Ichinose Shin

── 豊原さんの話を伺っていると、スポーツへの熱量をずっと高いまま持続しているように感じます。変な質問ですが、スポーツのどんなところがそれほど好きなのでしょう。

豊原 ドラマ『ガリレオ』で福山雅治さんが演じている天才物理学者・湯川学の「すべての現象には必ず理由がある」という言葉が好きで、スポーツってまさにそうだなと思うんです。「奇跡」と呼ばれる試合にも、その結果には必ず技術や理屈、伏線がある。そこには人間ドラマも超絶技巧も戦略、戦術、組織づくりもある。そうしたものを積み上げていったり、あとからひもといてもいいですが、スポーツの結果と理由を考えるのは最高に面白い。

 2007年の夏の甲子園決勝で、広陵の野村祐輔投手(元広島)がド真ん中に投げてしまって逆転満塁弾を打たれて(佐賀北に)負けた。たまたまボールが真ん中に行ったとしても、その「たまたま」はなぜ誘発されたのか。必ず理由があるはずなんです。偶然に見えても偶然じゃない。スポーツって本当に面白いです。


豊原 謙二郎(とよはら・けんじろう)
INFINITY MOMENT」ファウンダー・CEO、元NHKアナウンサー/1973年生まれ、神奈川県藤沢市出身。1987年の「雪の早明戦」を見てラグビーに憧れ、湘南高校時代はラグビー部主将を務めた。早稲田大学卒業後の1996年にNHK入局。スポーツ実況でキャリアを積み、2015年と2019年ラグビーW杯の実況を担当。2019年、日本が勝利したアイルランド戦の「奇跡とは言わせない!」など記憶に残る言葉を残した。2021年の東京五輪では開会式実況を担当し、2020〜2024年には『サンデースポーツ』キャスターを歴任。2025年3月にNHKを退局し、現在は起業した会社の代表やフリーアナウンサーなどとして活動している。子どもの頃からのモータースポーツファンで、「つちやレーシング」広報も務める。

著者プロフィール

  • 一ノ瀬伸

    一ノ瀬伸 (いちのせ・しん)

    ライター・編集者/1992年、山梨県市川三郷町生まれ。立教大学社会学部卒業後、山梨日日新聞記者、雑誌「山と溪谷」編集者などを経て2020年からフリーランス。「webスポルティーバ」では競技問わず企画・編集を主に行なう。自身は元高校球児でアンダースロー投手だったが、目立った活躍はなかった。

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