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「オリンピック金メダルと同じくらい大切なことがある」橋本大輝、谷川航の育ての親が語る体操論 (3ページ目)

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha

【傲慢な人にはなってほしくない】

「体操人生の父? そんなことはないです。そんなに面倒見のいいほうでもないんですよ(笑)。

 僕の指導方針は、どちらかというと弱い子のほうを気にしてあげています。強い子はしっかりと自分でやり抜くだろうと思うので。もちろん、オリンピック選手を作りたいとか、金メダルを取れる選手を育てたいとは思いますけど、レベルが下の子たちが満足して毎日を送れているかどうかは、同じくらい気になります。

 強い子は思いきり怒られてもいいんですよ。でも、そこまでの実力がない子とか、ちょっと集団になじめない子たちを大事にしてくれるクラブであってほしいと思っています。強い子はそれだけで認めてもらえます。性格が悪くてもね。でも、強くない子がそうだったら、いじめの対象になりかねない。いろいろなタイプの子たちがいて、お互いを尊重し合ってやろうというなかで、相性が合う、合わないもある。それを無理に合わせる必要もないけど、のけ者にはしないようにしていくという、そんな教育が一番大事なところですかね。お互いを認めようという関係性が大切で、そこに反した言動は腹立たしいですよね。

 体操に対して、いろんな関わり合いがあっていいんです。オリンピックで金メダルを取りたいという選手もいれば、中途半端でも体操をやりたいという選手がいてもいいと思っています。英語の補習に行ってから来る子もいますが、それでいい。お互いが正反対の立ち位置にいながら、体操が好きという同じ価値観を持てる子たちが一緒に練習することは、いいことだと思うんです。

 今回のパリ五輪代表選考では、航と(谷川)翔(航の弟)の間では、翔が代表になれなかったから"新たなミッション"が待っているんですよ。ミッションと言うと変ですが、それは国体の関東予選で完全試合をすることなんです。僕が『オリンピックも国体も同じだよ』と言ったら、『まだそこまでの境地には至っていませんよ』と言っていました。出たことがない人が言うのもおかしいけどね。だけど、本当にそんな感覚を持ってもらいたい。傲慢な人にはなってほしくないからね」

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