「EXILEに会えるかも」とガールズケイリンへ 通算500勝達成の山原さくらは大病を乗り越え今、キャリアのピークを迎える (3ページ目)

  • 加藤康博●文 text by Kato Yasuhiro
  • 池田清太郎●写真 photo by Ikeda Seitaro

「手術を受けるまでは不安でしたが、お医者さんから『3ヶ月で元気になる』と言われ、すぐに前を向けました。いちばん苦労したのは体重管理。私はすごく太りやすいんです。入院中はプロテイン中心の食事にして人生最低体重を維持できたのですが、退院後、家に帰ったら(最低体重を気にした)母がたくさんスイーツを用意してくれていて、私もそれに抵抗できず、やっぱり太ってしまい(笑)。こんな体では恥ずかしくて復帰できないと思い、必死で練習して、体重を落としました」

 むしろ本当の苦しみはここから始まった。半年後に復帰を果たし、モチベーションにしていた優勝も予想より早く手にできた。いざビッグレースへと思いを新たにしたものの、腹部の痛みはまだ完全に治っておらず、思うように練習ができない日々が続き、勝てなくなっていく。そのフラストレーションで気持ちが落ち込んだという。

「そんな状態でしたが、優勝すればガールズグランプリに出られる特別な開催『ガールズグランプリトライアル』に出られたんです。みんながそれこそ命を賭けるほど真剣に挑むレースなので、自分なんかがここにいていいのかと考えてしまい、本当に恥ずかしかった。でもそこでファンの皆様からの声援を受けて、こんな自分でも見てくれている人がいるって思えたことが嬉しかったですね。ここで自分のペースで頑張ろうって気持ちを切り替えてから、すべてがいい方向に向き始めました」

今は病気も完治し好成績を残し続けている今は病気も完治し好成績を残し続けているこの記事に関連する写真を見る

【人とのつながりを感じられる仕事】

 2022年、山原は勝利を積み重ね、6年ぶりにガールズグランプリ出場を果たした。そこで2着に入り、完全復活を印象づけた。30歳になった今、キャリアのピークを迎えている。

 病気を経験したことでメンタルが確実に強くなったと山原は話す。痛みもその後の経験も、あれほど苦しかったものはない。それを乗り越えられたのだから、どんな困難でも乗り切れるはずと、何事にも前向きに考えられるようになった。

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