藤澤五月が初めて「歯が立たない。勝てないな」と痛感 初の日本選手権とひとり暮らしで驚きの体験 (2ページ目)

  • 竹田聡一郎●取材・構成 text by Takeda Soichiro
  • 藤巻 剛●撮影 photo by Fujimaki Goh

 5歳でカーリングを始めて、負けず嫌いで根拠のない自信を持ちながら練習や試合を重ねてきたそれまでの競技人生で、負けることもたくさんありましたが、「これはちょっと歯が立たない。勝てないな」と感じたことは正直、ありませんでした。

 それがこの時に、「日本選手権で優勝するのは簡単ではないぞ」と痛感したこと、そして当時はまだジュニア世代で、ジュニアの日本選手権も3位だったので、表彰式後に氷上でインタビューを受けながら「今年はジュニアも、日本選手権も3位かぁ、微妙だな」とぼんやり考えていたのを覚えています。

【浅間山の美しい姿を見て力をもらった】

 高校を卒業して、3月末に長野県に引っ越しました。

 私は佐久地区の営業所の配属だったので、千曲川のそばのアパートを借りました。人生初のひとり暮らしです。

 両親が引っ越しを手伝いにきてくれたのですが、ひととおりのことを済ませて帰ってしまうと、部屋はとても静かでした。軽自動車もテレビも購入済だったのですが、まだ届いていなくて退屈で、なぜかその時に「本当にひとり暮らしをするんだ」と実感した記憶があります。

 実際に生活がはじまると、周囲は田んぼだらけだったので、春から夏にかけては蛙がず~っと鳴いていて、慣れるまではとにかくうるさくて......。ある朝、起きてから窓を開けようとしたら、ガラスにでっかい蛙が張りついていて絶叫したこともあります。

 冬は想像以上に寒かったです。北海道の住宅や物件って断熱技術が高いのか、とても温かいんです。それに比べて、私が住んでいたアパートがそうだっただけかもしれませんが、特に冬は予想よりかなり寒かったです。台所でオリーブオイルが凍っていて、「冷凍庫以外でモノが凍ることがあるのか!?」という驚きの初体験をしました。

 そんなひとり暮らし1年目だったので、それまでは実家暮らしでちょっと虫が出たら半泣きで母を呼んでいた私でも、ちょっとの虫くらいでは動じないくらいタフにはなった気がします。

 そして、そういったことを経験するたびに、「ああ、ここは北海道ではないんだな」と感じつつも、「自分で選んだ道なんだから」と自分に言い聞かせて新生活と向き合っていました。

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